第50回医療功労賞
イベント・フォーラム
[第50回医療功労賞]中央表彰者の10人(上)
過疎地や海外の紛争地など、厳しい環境で長年地域住民の健康支援に尽くした人を表彰する「第50回医療功労賞」の中央表彰者10人が決まった。国内部門8人、海外部門2人の受賞者の横顔を紹介する。(敬称略)
【海外部門】
歯科医師の育成 カンボジアで30年 宮田隆(71)歯科医師
約30年間にわたり、カンボジアやラオスで歯科医師らの育成に力を尽くしてきた。
長年の内戦で荒廃したカンボジアで活動を始めたのは、1991年のことだ。現地の大学の歯学部を訪れた際、内戦の影響で教員の多くを失い、授業さえままならない状態を目の当たりにした。
「歯科医療復興のためにできることをしたい」と、自ら教科書や治療に使う機材集めに奔走。専門の歯周病学をはじめ、歯科治療に関する講義を受け持ち、教鞭をとった。
日本の大学に勤務しながら、2か月に1回ほどカンボジアに通っていたが、2002年には病院長を務めていた明海大学を退職。カンボジアなどでの活動に専念する決断をした。
当時51歳。「70歳くらいになると体が衰えてくる。歯科医として自分に残された時間を、誰にささげるのかを考えた結果だった」と振り返る。
その後、1年半ほどカンボジアに滞在。車に必要な医療機材を積み込み、歯科医がいない過疎地を中心に、カンボジア中をまわって診療を行った。現地住民の歯科・口腔疾患の改善に大きく貢献した。
歯科医師の教育にも力を入れた。カンボジア政府が認定する歯周病専門医を20人以上、育て上げた。まず熱意のある歯科医を10人ほど集めて教え、次はその歯科医たちが後輩を育成する。そんな仕組みを作り上げ、「良い循環ができた」と語る。教えを受けた歯科医師たちは現在、カンボジアの歯科医療の中枢で活躍している。
その成果を踏まえ、今は歯科医療が立ち遅れているラオスで、看護師に歯科口腔教育を行うプロジェクトに力を注ぐ。新型コロナウイルスの影響で現地には足を運べないが、日本で歯科医院での診療の傍ら、オンラインで現地の医療関係者に授業を行う日々を送る。「コロナが落ち着いたら一日も早く現地に向かい、まだまだ活動を続けたい」<カンボジア、ラオス>
31か国へ途上国の医療支援 三好知明(66)医師
国立国際医療研究センターの外科医として、31か国に130回派遣され、主に発展途上国の医療支援にあたった。
妊婦や乳児の死亡率が高いボリビアでは、現地の医師を指導し、救急搬送システムの強化や妊婦の健診の促進などに力を注いだ。ラオスでは、多くの国や国際機関の支援事業が乱立していたため、連携体制を作り上げた。
日本国内でも、若手医師や途上国の医師に研修を行い、後進の育成に力を注いだ。<ボリビア、ラオスなど>
中央選考委員 (敬称略)
永井良三(自治医科大学長)
曽根智史(国立保健医療科学院長)
五十嵐隆(国立成育医療研究センター理事長)
尾身茂 (地域医療機能推進機構理事長)
正木尚彦(国立療養所多磨全生園長)
菱沼典子(三重県立看護大学長)
吉田学 (厚生労働事務次官)
伊原和人(厚生労働省医政局長)
佐原康之(厚生労働省健康局長)
笠井聡 (SOMPOホールディングス介護・シニア事業オーナー執行役)
首藤正一(アインホールディングス代表取締役専務)
杉山美邦(日本テレビ放送網代表取締役社長執行役員)
山口寿一(読売新聞グループ本社代表取締役社長)
吉村秀男(読売新聞東京本社取締役事業局長)
主催 読売新聞社
後援 厚生労働省
日本テレビ放送網
協賛 損保ジャパン
アインホールディングス
創設50年機に刷新
医療功労賞は1972年に読売新聞社が創設し、これまで医療、福祉、介護関係者ら約4800人を顕彰してきました。2022年度、創設50年を機に本賞を刷新します。
国内部門では、従来の都道府県表彰に代わり、全国を8ブロックに分けた「地方表彰」を創設し、厚生労働省本省と地方厚生局(全国7局、1支局)と連携して受賞者を選び、表彰します。その後、地方表彰の受賞者の中から10人の中央表彰者を選びます。海外部門は廃止し、海外での活動は本社の「読売国際協力賞」で審査・顕彰します。
審査基準も見直し、医療・介護関係者らが連携して支える「地域包括ケア」の取り組みなどを評価します。詳しい応募条件は5月ごろ、紙面などでお知らせします。
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