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医療・健康・介護のニュース・解説

がん治療で抜け毛、発疹、爪の変形…外見のケア 美容師、ネイリストに研修も

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 がん患者が薬物や放射線による治療を受けると、髪の毛が抜ける、皮膚に発疹が出るといった副作用が生じることがあります。こうした悩みを抱える患者に対し、医療機関が相談窓口を設けたり、関連学会がアピアランス(外見)ケアの指針をまとめたりするなど、支援の動きが進んでいます。(野村昌玄)

副作用に苦しむ

 がんは、新薬が相次いで登場するなど治療が進歩し、生存率も向上しています。ただ、副作用に苦しむ患者は少なくありません。吐き気やだるさなどに加え、脱毛、爪の変形、発疹といった見た目に関わる症状が表れることもあります。

 関東地方に住むピアノ講師の女性(58)は2019年冬に乳がんと診断され、抗がん剤治療を受けました。治療開始から3週間ほどして髪や眉毛、まつ毛が抜けはじめ、その後は爪も黒ずみ変形しました。女性は「抗がん剤による 倦怠けんたい 感で体を動かすのがつらいのに、見た目も変わっていきショックでした。本当に元に戻るのだろうかと不安でした」と振り返ります。

 横浜市は19年に、市内の医療従事者や国立がん研究センター中央病院(東京都)などの協力を受け、こうした問題への対処法をまとめた冊子を作成しました。〈1〉ウィッグ(かつら)は購入前に主治医や看護師に相談する〈2〉爪や肌は清潔に保ち、保湿剤やハンドクリームを塗る〈3〉肌は紫外線から守る――ことなどを紹介しています。

美容師らに研修

 相談体制を整える病院もあります。

 金沢医大病院(石川県)は17年に、個別相談を希望する患者を対象にアピアランスケア外来を始めました。患者の多くは、周囲の視線が気になり、これまでの人間関係が保てない、自分らしさを失ってしまうといった不安を抱えています。ウィッグをつけると、周囲にがんであることが知られてしまうと悩む人もいるといいます。

 外来では、患者の話を丁寧に聞き、病気を誰にどのように伝えるのかを具体的に考えたり、「ウィッグはおしゃれを楽しむ道具でもある」と考え方を変えられるよう助言したりします。担当する看護師の久野真知子さんは「患者の背景にある社会的、心理的な問題に向き合い、支援することが重要です」と指摘します。

 県内の美容師やネイリストらを対象に研修を実施する取り組みも始めました。がんになってウィッグの着用を希望する人がいることを理解してもらったり、施術前に爪や皮膚の炎症に気づいたら医師や看護師らに相談する体制を作ったりしていくことが目的です。

 日本がんサポーティブケア学会は21年10月、アピアランスケアに関する指針をまとめました。見た目の変化に対する正しい対応策について計43項目を挙げ、検証しています。例えば、発毛を促すのに頭皮マッサージが有効かどうかは、疲労軽減や精神的安定をもたらす可能性はあるが、科学的根拠に乏しいと説明しています。

 指針の作成責任者で、臨床心理士としてケアに関わっている目白大教授の野澤桂子さんは「患者や家族が不確かな情報に惑わされないためにも、最新の知見を蓄積し適切なケアを普及させたい」と話しています。

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