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福井尚志「ひざの痛み 自力で解消」

医療・健康・介護のコラム

早期なら大抵は治る膝の痛み 減量と膝回りの筋力強化で再発予防を

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 このコラムでは、これまで5回にわたって中年以降の方の膝の痛みについて書いてきました。最終回となる今回は、膝の痛みについてまとめるとともに、膝の痛みの対処法についても説明したいと思います。

膝の痛みには治るものと治りにくいものがある

大抵は治る膝の痛み こじらせる前に減量と膝回りの筋肉強化を

 これ一発で膝の痛みがたちまち楽に……という治療法があればいいのですが、どうも膝の痛みはそんなに単純・簡単ではないようです。膝の痛みにはいろんな原因があることを述べてきましたが、痛みの原因によって治りやすさもある程度決まってきます。

 まず、比較的良くなりやすいのはスジの痛みです( 第5回参照 )。自然に治ることも多いですし、医師よる治療の効果が出やすい点でも治りやすい痛みと言えます。

 次に骨の中から生じる痛み( 第3回参照 )。これは基本的に骨折の一種ですから、骨折が治るにつれて痛みは軽くなるのが普通です。特に、骨折の範囲が小さな場合には、骨折が治れば痛みもほぼなくなります。ただ、広い範囲で骨折が起こった場合は膝の痛みが完全になくならず、一定のレベルで残ることもあります。

 次に滑膜の炎症による痛み( 第4回参照 )。この痛みも個人差がありますが、大抵は時間の経過とともに数週から数か月程度で落ち着いてきます。ただし、滑膜の痛みがなかなか良くならない場合もあり、手術が必要になることもあります。

早期の膝の痛みは大抵時間とともに軽くなる

 こう書くと、膝の痛みは大抵治ることになりそうで、「あれ?」と思われる方もおられるかもしれません。でもこれ、間違いではありません。膝の痛みを訴える方のうち、膝が初めて痛くなった人や膝の痛みが始まってからの期間が短い人では、治療や時間の経過とともに膝の痛みが軽くなることがほとんどです。

 その一方で、なかなか痛みが良くならずに手術を受ける人がいるのも事実です。そういった治りにくい膝の痛みはどのような状態でしょうか。

 一概に述べるのは難しいのですが、やはり軟骨のすり減りが進んでしまって、関節のすき間がなくなってしまった人、O脚など膝の変形が目立つようになった人の膝の痛みは取れにくい傾向があります。前に述べたように、軟骨がすり減ってもあまり膝が痛まず、普通の生活を送れている方も多いのですが( 第2回参照 )、軟骨がすり減る過程で関節の中に痛みを引き起こすような変化が蓄積していくと、やがてなかなか治らない、しつこい膝の痛みとなってしまいます。

治りにくい痛みになるのを防ぐ

 中高齢の方の膝の痛みは、基本的には年齢に伴う関節の変化が原因になって生じます( 第1回参照 )。このため、膝の痛みを完全に予防するのは、将来、医学がもっと発達したとしてもなかなか難しいのではないかと思います。

 ただ、先にも述べたように痛みはじめの膝痛はずっと続くことはまれで、治療や時間経過とともに良くなることがほとんどです。しかし、一度痛みを感じた人は、その後にまた痛みを繰り返す危険があります。痛みを繰り返すうちに次第に治りにくい痛みになってくる傾向があるわけですから、一度でも膝の痛みを経験された方は、痛みが引いているうちに再発を防ぐ対策を行っていただきたいと思います。

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福井 尚志(ふくい・なおし)
東大教授が本気で教える 「ひざの痛み」解消法

 東京大学大学院総合文化研究科教授。

 1960年生まれ。東京大学医学部卒。整形外科専門医。医学博士。独立行政法人国立病院機構相模原臨床研究センター客員研究員。日本整形外科学会、国際変形性関節症学会会員。ひざ関節の疾患を専門とし、特に変形性ひざ関節症については20年以上にわたって研究を続けている。
 『東大教授が本気で教える 「ひざの痛み」解消法』(中央公論新社、1540円)を監修。

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