介護のキホン
医療・健康・介護のコラム
家族の介護、無理をしすぎていませんか?…抱え込まずに相談 思い吐き出す
大切な家族のために、と無理をしすぎていませんか? 今回は、「介護をする人」の心身のケアがテーマです。
「介護を担う人が病気になったり、うつになったりして、介護を続けることが難しくなってしまったら大変です」。介護の現場に詳しい「ケアタウン総合研究所」代表の高室成幸さんは、過度な負担がかかることを心配します。
ケアマネや地域の窓口に
介護生活は突然始まる場合があり、いつまで続くかわかりません。昼夜を問わない介護で睡眠不足になったり、仕事との両立に悩んだりして、体力的、精神的に追い詰められる人もいます。「介護うつ」につながる恐れもあります。ひとりで抱え込まずに周囲に相談することが大切です。
高室さんは、ケアプランを作成し、介護サービスの調整をするケアマネジャー(介護支援専門員)に状況を伝えることを勧めます。「介護サービス利用者が望む暮らしの実現だけでなく、家族の負担がどうやったら軽くなるかを考えることもケアマネジャーの役割です」と強調します。
例えば、「認知症の親が夜中に何度も起き、睡眠時間が取れずにつらい」といった状況なら、ショートステイの利用を増やすなどの解決策を一緒に考えてくれます。
自治体や社会福祉法人が運営している「地域包括支援センター」も、総合的な窓口として相談を受けています。主任ケアマネジャーや社会福祉士らが対応してくれます。
家族の会や交流カフェ
地域で開かれている「家族の会」や「交流カフェ」などに参加してみることも、心を楽にする方法の一つです。
東京都練馬区では、ボランティア団体が主催する「介護家族の会」が、集会所など10か所ほどで開かれています。会員が集まり、近況報告をしながら悩みを共有したり、介護の専門家を招いた勉強会を開いたりしているそうです。
「同僚や友人には言いにくいことも、同じ境遇の人なら話しやすい。気持ちを吐き出せる場所を作ることが必要です」(高室さん)
家族の診察時に医師と話したり、自治体の相談会に出席したりして、病気について知ることもポイントです。
例えば、認知症では、行動のコントロールがききにくくなる症状が出る場合があります。突然、暴言や暴力となって表れた時、「介護の仕方が悪いからではないか」と自分を責めてしまう人がいます。
しかし、それが病気のせいだと知っていれば、受け止め方も違ってくるはずです。
くるみクリニック(東京都世田谷区)院長で認知症専門医の西村知香さんは「ご家族はできなくなったことを気にしがちですが、『着替えは一人でできる』など、できることに目を向けることも大切です」と伝えているそうです。
自身の健康にも目配りを
介護が始まると、目の前のことで精いっぱいになり、自分が追い詰められていることに気付くのが難しくなりがちです。悩みがただちに解決するとは限りませんが、こうした様々な相談相手がいることが、安心につながります。
家族の介護が始まる時は多くの場合、介護する人も中高年期。西村医師は「ストレスや睡眠不足で体を壊さないよう、自身の健康管理にしっかり目配りを」と助言します。
◎「介護のキホン」は今回で終わります。
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。