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付属病院長不在・9講座の教授が空席…「開学以来最大の危機」新学長の手腕は未知数

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 国立大学法人・旭川医科大(北海道旭川市)の学長だった吉田晃敏氏の進退を巡る問題は、学長選考会議が学長の解任申し立てを取り下げ、文科相が吉田氏の辞任届を受理したことで、一区切り付いた。ただ、およそ1年半の間、混乱に揺れた学内の正常化への道のりは厳しく、新学長となる西川祐司氏の手腕に注目が集まっている。(林麟太郎)

付属病院長不在・9講座の教授が空席…「開学以来最大の危機」新学長の手腕は未知数

記者会見で意気込みを語る西川氏(2021年12月1日、旭川市で)

 「本学は開学以来最大の危機に ひん している。大学再生のために、吉田氏の影響力を完全に排除し、優れた医療者を育成するという根本的な理念に立ち返る」。昨年12月、次期学長として記者会見した西川氏は改革への決意を口にした。

 旭川医大で吉田氏の問題が表面化したのは2020年末。市内の民間病院で新型コロナウイルスの大規模クラスター(感染集団)が発生した際に、患者の受け入れを巡って吉田氏と同大病院長だった古川博之氏が対立。21年1月に古川氏が同大に解任された。

 学内の反発は強まり、教授らは選考会議に吉田氏の解任を求める署名を提出。これを受けて同会議は同6月、不正支出など計34件の不適切な言動を認定し、文科相に解任を求めた。吉田氏もこれに先立ち、文科相に辞任届を提出。文科省は解任か辞任かの判断を進めていたが、選考会議は、結論が出るまで時間がかかり、いつまでも新体制に移行できないことを恐れ、今年2月、申し立てを取り下げ、吉田氏は辞任が決まった。

 文科相は同会議が昨年11月、次期学長に選考した副学長の西川氏を4月1日付で新学長に任命する方針だ。

■ガバナンス改革

 新年度を新体制で迎える同大は課題が山積している。

 高度な医療が提供できる大学病院として、道北の地域医療の中核を担う付属病院は、院長の解任からすでに1年以上が経過しているが、後任は決まっていない。学内の教授の選考も進まず、麻酔・蘇生学や救急医学などの臨床系を中心に9講座の教授が空席で、研究などへの悪影響が心配される。

 何より求められるのが学内のガバナンス改革だ。選考会議の奥村利勝議長は、次期学長について発表した昨年11月の記者会見で「大学の大きな問題はガバナンス不全。そこを何とかして、改善していくことが求められている」と注文を付けた。

 吉田氏が学長を務めた時代は、学長直属の組織だった学長政策推進室が予算や人事権を握り、学長と推進室の「密室会議」で大学の運営方針が決定していた。本来、副学長ら幹部でつくる「大学運営会議」が執行部の役割を担うが、議論は行われず、学長の独断に歯止めをかけられなかった。国立大学法人法は、学長に強い権限を認めており、新体制では、権力の集中をどう避けるのかも課題となる。

■来月中に病院長任命

 西川氏は「新たな執行部でいち早く大学の体制を整える」とし、4月中の病院長の任命を目指す。教授選考もすみやかに行う方針だ。

 また、遠隔医療の推進や外国人医師研修施設の建設計画などの新事業を掲げた吉田氏に対し、「派手な事業ではなく、大学の根幹である研究、教育、診療のレベルアップが何よりも大事だ」と主張する。ガバナンス改革では学長への権力の集中を防ぐため、「大学運営会議を中心にした民主的な大学運営」を掲げ、学長政策推進室を廃止する。大学運営会議の参加者を増やし、「議論していく中で運営方針を決めたい」と話す。ただ、大学幹部の人事権を学長が握る構造は変わらず、抜本的な問題の解決につながるかは不透明だ。

■経営手腕、未知数

 研究畑の長い西川氏の経営手腕については未知数な部分もある。近年、国からの国立大への運営費交付金は減少傾向にあり、安定した運営には外部資金がかかせない。ある大学関係者は「やり方の是非はともかく、吉田さんは事業を通じて国や企業から資金を獲得する能力は高かった。開かれた大学運営はもちろん大事だが、学長が先導して、経営力を発揮する場面も求められる。西川さんがどのように手腕を発揮するかを期待したい」と話した。

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