武井明「思春期外来の窓から」
医療・健康・介護のコラム
電柱のカラスに話しかけていた…自閉スペクトラム症で不登校の中2男子を支えたもの
カラスは人からあまり好かれない鳥ですが、このカラスのことが大好きな中学生がいました。子どもとカラスの交流を通して、思春期の子どもの内面について考えてみたいと思います。
コミュニケーションが苦手で感覚過敏も
大輔君(仮名)は不登校ということで、思春期外来を受診した男子中学生です。
両親、3歳年下の妹の4人家族です。幼稚園のころから、人と一緒の行動をすることが苦手で、自分の興味のあるお絵描きやアリの巣の観察に一人で熱中していました。また、首筋に付いている服のタグが皮膚に触れることを嫌がるので、新しい服を購入したら、お母さんが必ずタグを切り取っていました。
小学校の高学年になると、クラスで孤立するようになりました。中学校でも友だちができず、休み時間は一人で鳥の図鑑を読んでいました。
中学2年に進級してから、朝になると頭痛や腹痛を訴え、学校を休み出すようになりました。6月になり、お母さんに連れられて思春期外来を受診しました。
初診時の大輔君は非常に緊張した表情を示し、質問に短く答えるだけでした。コミュニケーションが苦手で、興味のあることにはとことん集中し、感覚過敏があるなど、自閉スペクトラム症の障害特性が認められました。不登校および自閉スペクトラム症ということで、母親とともに、2週間に1度の割合で通院することになりました。
同級生に「変人」「オタク」「キモイ」と言われ
通院開始後も、大輔君はなかなか話をしてくれませんでした。そこで診察のたびに、大輔君が好きな将棋をすることにしました。初めは主治医が勝っていましたが、そのうちに、大輔君が勝つことも増えました。
その後も不登校が続きましたが、少しずつ話をしてくれるようになりました。通院を開始して3か月後の診察では、
「小学校のころから、同級生に『変人』『オタク』『キモイ』などと言われてバカにされてきました。中学生になってからも同じ小学校出身の子がいて、同じようにバカにしてきました。僕には友だちもいないし、学校がつらくてしょうがなかったので休むようになりました」
と話してくれました。
お母さんは、
「小さいころからお友だちを作ることが苦手だったので、幼稚園や小学校の時には、私が大輔の同級生を家に招いて、一緒に遊んでもらうようにしていました。そんな時でも、大輔は一人でゲームに没頭していました。人よりもモノが好きな子で、大人になってからのことがすごく心配です」
と述べていました。
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