山中龍宏「子どもを守る」
子どもは成長するにつれ、事故に遭う危険も増します。誤飲や転倒、水難などを未然に防ぐには、過去の事例から学ぶことが効果的です。小さな命を守るために、大人は何をすればいいのか。子どもの事故防止の第一人者、小児科医の山中龍宏さんとともに考えましょう。
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衣服に引火した小1女児 熱くて走ったら全身に燃え広がって…木綿、起毛、ゆったりした服は危ない
これまで熱湯や電化製品などによるやけどについてお話ししてきましたが、時には、火によるやけども起こります。多くの場合、着ている衣服に火が燃え移る「着衣着火」です。総務省消防庁のまとめによると、2015年から20年までの5年間に572人の着衣着火があり、毎年100人前後が死亡しています。高齢者に多くみられますが、子どもでも起こっています。全身やけどになると死亡することもあります。
起毛の生地 火が一気に広がる「表面フラッシュ現象」
事例 :小学1年生女児。2002年7月24日、午後7時20分頃、福井県武生市(現・越前市)のお寺で、地域の子どもたちが主催する祭りに参加していた。寺の入り口の石段横の石垣に、足元を照らすためにろうそくを立てていた。火が消えかかっていたため、風を遮ろうと手をかざしていたところ、ろうそくの火が木綿製の浴衣のすそに燃え移ったらしい。全身のやけどで死亡した。
事故当時、周りに大人がおらず、離れた場所にいた中学生らが気づきましたが、すでに火は燃え広がっていたとのことです。熱くて子どもが走ったため、火が全身に回ったと思われます。
衣類への引火には、衣服のデザインと素材が大きく関与しています。引火しやすい衣類としては、ネグリジェ、ゆったりしたパジャマ、浴衣、ナイトガウン、ロングスカートなどが多く、素材として多いのは木綿です。木綿や木綿が混入されている生地は火をひろいやすく、急速に燃え上がります。冬場のパジャマなどに使われることが多い起毛の生地などは、火が一気に広がる「表面フラッシュ現象」が起こるおそれがあります。
引火する火としては、こんろ、たき火、バーベキューの火、キャンプファイア、ストーブ、花火の火、ろうそくの火、ライターなどです。ガスこんろで調理中に、奥の調味料を取ろうとして袖に着火したり、足元で燃えているものが衣服に着火するなどが起こっています。
体にぴったりとフィットする服を
寝るときは、ゆったりとしてひらひらする衣服ではなく、体にぴったりとフィットするものを身につけるようにします。欧米では、子どもの寝衣には難燃性素材を使用することが義務づけられています。
たき火など火に当たるときは、火に背を当てていると引火することがあるので、体の前面を当てるようにします。また、火を使う場合は、必ず水をそばに置いておき、子どもだけで火を使うことは避けます。ストーブには、ストーブガードを使用し、仏壇には本物のろうそくではなく、ろうそく型豆電球を使用します。
子どもが調理をすることもあるでしょう。調理中の着衣着火を予防するためには、マフラー、ストールなどは外して調理する、ガスこんろの上や奥の物を取るときは、こまめに火を消し、服のすそや袖に炎が燃え移らないようにする、鍋等の底から炎がはみ出さないよう適切な火力に調整する、火のつきにくい防炎品のエプロンやアームカバーを使用する、袖口などに防炎加工スプレーをかけるなどが有効です。
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