新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
医療・健康・介護のコラム
最初は「帰れ」とどなられたことも 心を開いてくれた患者
ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)

【今月のゲスト】
村岡ケンイチ(むらおか・けんいち)さん
似顔絵セラピー・プロジェクト代表。名古屋芸術大学卒。小さい頃から似顔絵を描くのが好きで、新しいアートという形でなにかできないかとの思いを胸に、大学卒業後、似顔絵の会社に入り、似顔絵に取り組む日々を送った。医療関係者に声をかけられたのが縁で、2006年12月から「似顔絵セラピー」の活動を始める。07年からフリーとして活動。似顔絵国際大会・白黒部門5大会連続優勝。NHK BS「今夜は絵顔で眠りたい!」などに出演。
・似顔絵セラピー・プロジェクト http://www.nigaoe-therapy.jp/
「似顔絵セラピー・プロジェクト」代表の村岡ケンイチさん(下)
今日は、「似顔絵セラピー」に取り組んでいる村岡ケンイチさんが私のカフェに来ている。コーヒーを提供した際に、無理を言って私の似顔絵も描いてくれるようにお願いをした。
彼は、全国各地の病院などで、患者さんの人生観を踏まえた似顔絵を通して、多くの患者に大切な人生観を振り返る時間を提供している。思い出深いケースを話してくれた。
「最初は『帰れ』とどなられて。それから20分ぐらい、部屋の中がシーンとして。私は出口の近くで、まるで自分が壁の一部になったようにじっと待って……。でも、しばらくするうちに、ぽつりぽつりと話をしてくれるようになり、ふと空気が変わったんですよね。描き上げて絵をお渡しして、最後には、向こうから握手をしてくれたんです」
この方は、病院の医療者に対して、それまで心を開いてくれずに困っていた患者さんだったそうだ。
「似顔絵を描くために長時間、話をしますから、それまで医療者には話すことがなかった人生観に関する話もしてくれるようです」
彼が描いた似顔絵が、患者情報のひとつとして、病院の電子カルテに取り込まれていることもあったという。それだけ、医療者には重要な情報源となっているのだろう。
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