石蔵文信の「男と女の楽しい更年期!」
医療・健康・介護のコラム
テレビに文句を言う夫から妻の心が離れるのはなぜか?
私は、夫婦にお会いした時、時々「家族で笑っていますか?」と質問します。残念ながら、私の診察室に来るご夫婦の多くは、家族あるいは夫婦で最近笑ったことがないようです。それどころか、ほとんど会話がないということもあります。ひどい時には、朝起きて顔を合わせても、ニコリともせず、「おはよう」も言わない。会社に行くときも、「行ってきます」や「いま帰ったよ」などの基本的会話はなし。夕ご飯の時も、「いただきます」や「ごちそうさま」も言わない。ましてや、料理に対する感謝コメントなどありません。
けんかをする夫婦は長生きする
2017年の国立社会保障・人口問題研究所「生活と支え合いに関する調査」では、65歳以上の独居男性の15%は、会話の頻度が「2週間に1回以下」ということです。女性の場合はその3分の1くらいですから、いかに男性がしゃべらないかがわかります。夫婦で暮らしている場合でも、これと同様のことが起きているのかもしれません。
会話がない代わり、「夫はいつもテレビに文句を言っている」という家庭もあります。政治やスポーツなどで批判するのはまだ許せるとして、「女のくせに」などと言ったり、学歴が高くないタレントをばかにしたり……といったケースを耳にします。聞いている妻や子供も嫌な気持ちになりますから、間接的な「モラハラ」かもしれません。家族に直接、話しかけなくても、夫の言動はよく聞かれているので注意が必要です。本当は直接、妻子に話せばいいのですが、反発を恐れ、それはできないのです。
会話がないので、夫婦げんかすらしない。これでは、家庭がお通夜のようになってしまいます。「けんかになってしまうので、なるべく話さないことにしている」という方も多いと思います。しかし、ミシガン大学の調査によると、双方が怒りをあらわにして夫婦げんかをしている夫婦の方が、言わないで我慢している夫婦より長生きをしています。夫婦げんかが少ないことが仲の良い証拠であればいいのですが、夫にも妻にも不満があって、我慢をしているのなら、当然、心身にも影響を及ぼし、健康を害することもあるでしょう。
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