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全身の筋力が徐々に衰える先天性の「脊髄性筋萎縮症」…新薬登場、早期治療へ新生児検査も広がる

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 全身の筋力が徐々に衰える先天性の難病「脊髄性筋 萎縮いしゅく 症(SMA)」は、命に関わります。長らく根本的な治療法がなかったのですが、ここ5年で、新薬が相次いで登場しました。発症前に使えるタイプもあり、早期発見のために行う新生児への検査が広がりつつあります。(安藤奈々)

相次ぐ新薬

 SMAの原因は、運動神経を維持するのに必要なたんぱく質をつくる遺伝子「SMN1」の欠失や変異です。患者は、出生2万人に1人の頻度とされます。

 発症する時期が早いほど、重症化しやすい傾向があります。生後6か月以内に症状が出ると、寝たきりとなり、体を動かすのが難しくなります。この場合、人工呼吸器をつけなければ、2歳までにほとんどの子どもが亡くなります。

 新たな治療薬は3種類あり、筋力の低下を抑えることを狙います。注射薬「スピンラザ」と飲み薬「エブリスディ」は、SMN1に似た遺伝子の働きを活発にすることで、運動神経の維持に必要なたんぱく質を作り出します。いずれの薬も使い続ける必要があります。

 一方、「ゾルゲンスマ」は、体内にSMN1を注入する遺伝子治療薬です。対象は2歳未満に限られますが、1回の点滴投与で済み、遺伝子の異常が見つかれば、発症前でも使えるのが特徴です。

 自治医大小児科教授の山形崇倫さんは、「どの薬も、一日でも早い投与が、高い効果につながります。できるだけ発症前に見つけられるような体制作りが課題です」と説明します。

 新生児の段階で検査をする地域的な取り組みも始まっています。宮城や岐阜、愛媛など一部の都道府県では、親が希望した場合、自費で受けられます。新生児のかかとから採取した血液で、SMN1の欠失があるかどうかを調べます。

 熊本県では、2021年2月に検査が始まりました。ほどなくして、SMN1が欠失した新生児が見つかり、発症前の治療が実現しました。4月生まれの男児、武藤 煌季こうき ちゃんです。

 煌季ちゃんは5月、熊本大病院でゾルゲンスマの点滴を受けました。現在、生後11か月になり、つかまり立ちや伝い歩きができるようになりました。母親の 朗子さえこ さん(37)は、検査結果を知った時、とても驚いたそうです。「初めて聞く病名で、何かの間違いだと思いました。今は、息子がすくすくと育つ姿を見て、本当にありがたいと感じます」と話しています。今後も、発達の確認のため、同病院に通う予定です。

 地域の取り組みとは別に、小児科医らによる一般社団法人「クレアリッド(希少疾患の医療と研究を推進する会)」が、千葉、埼玉両県などの約50の医療機関で検査を受け付けています。

特徴的な症状

 親や周囲の人が、SMAに特徴的な症状を知っておくことが重要です。

 SMAの赤ちゃんは筋力が弱く、両腕を持って起こそうとすると頭を上げられなかったり、うつぶせの状態から抱き上げると、手足がだらんと下がっていたりします。東京医科歯科大小児科助教の水野朋子さんは、「こうした症状があれば、早めに小児神経を専門とする小児科医を受診してほしい」と呼びかけています。

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