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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

「勉強・仕事」「恋愛・結婚」「出産・子育て」…AYA世代のがん患者にはどんなサポートが必要?

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「勉強・仕事」「恋愛・結婚」「出産・子育て」…AYA世代のがん患者にはどんなサポートが必要?

イラスト:さかいゆは

 AYA(アヤ)世代というのは、Adolescent=思春期・青年期の若者のA世代(15~24歳くらい)と、Young Adult=若年成人のYA世代(25~39歳くらい)をあわせた世代で、おおむね15~39歳を指します。近年、AYA世代でがんにかかった患者さんへのサポートの重要性が指摘されるようになり、様々な取り組みがなされています。3月5日~13日には、「 AYA week 2022 」というイベントが開催され、多くの患者さん、団体、医療機関が参加しました。

年間約2万人 女性の割合が高く

 日本では、年間約100万人ががんと診断されます。2人に1人は、一生のうち一度はがんになるとされ、すべての人にとって身近な病気と言えます。ただ、若くしてかかる方はあまり多くはなく、AYA世代でがんと診断される人は約2万人です。すべてのがん患者さんにサポートが必要ですが、AYA世代に特有の課題もあり、この世代を重視した取り組みも求められています。患者さんからは、「周囲の理解を得にくく、戸惑うことばかり」という声も聞きます。

 15歳未満の子どもがかかる「小児がん」には、白血病、リンパ腫、脳腫瘍、胚細胞腫瘍などがあります。小児期から治療を受け、成長してAYA世代となる方もおられます。小児期のケアは小児科領域で積極的に行われますが、AYA世代になっても、適切なケアを続ける必要があります。

 A世代でかかるがんには、小児がんと同様の傾向がありますが、YA世代になると、乳がん、子宮 (けい) がん、大腸がん、胃がんなどが増えてきます。また、AYA世代には、骨軟部肉腫、脳腫瘍、胚細胞腫瘍といった、発生頻度の少ない「希少がん」も多く、治療面での難しさもあります。

 全世代を見ると、がんにかかるのは男性の方が多いのですが、乳がんや子宮頸がんの頻度が多いAYA世代では、女性の割合が高くなっています。がん研有明病院では、AYA世代の患者さんの約8割が女性です。

大事なことをあきらめずにすむように

 AYA世代は、人生にかかわるできごと(ライフイベント)をたくさん経験する時期です。進学、勉強、部活動、友達付き合い、恋愛、資格取得、就職、親からの独立、結婚、出産、子育て……。新しい経験を重ね、いろいろな出会いがあり、多くの悩みにも直面します。多くの可能性がある一方で、重要な選択を迫られることもあります。こうした大事な時期を、がんとともに過ごしていくのは容易なことではないでしょう。治療との両立が難しく、あきらめなければならないこともあるかもしれません。学びたい人が学び、働きたい人が働き、子どもを持ちたい人が子どもを持つ――。大事なことをあきらめなくてすむように、治療との両立を支援する取り組みが必要です。

 そのために、まず必要なのは、まわりの人たちの理解です。がんにまつわる過剰なイメージのために、がんであることを隠して過ごしている患者さんがたくさんいるのが現状です。がんであることを知られたら、差別されてしまうのではないか、仕事を続けられないのではないか、という心配をしている方も多くおられます。実際に、がんであることを伝えて、つらい目に遭ったという患者さんもいます。がんがあっても、がんの治療中でも、社会の一員として普通に受け入れ、困っていることがあれば手を差し伸べ、助け合う、そんな社会であってほしいものです。まわりの人は、患者さんの体調や気持ちの変化に配慮しつつ、基本的には、今まで通り、普通に接していただきたいと思います。

 その上で、AYA世代の個々の課題に対し、より積極的なサポートが求められます。勉強や進学については、学校と連携しながら個別にサポートする必要があります。オンライン授業などリモートでの学びの機会が増えているのは、両立の後押しになっているようです。就労に関しては、不当な扱いを受けず、自分らしく働き続けられるような「仕事と治療の両立支援」が必要です。職場の上司や人事労務担当者、担当医やがん相談支援センターなどに相談してみるとよいでしょう。

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 院長補佐・乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大附属病院や国立がんセンター中央病院などで経験を積んだ。2005年、東京共済病院に腫瘍内科を開設。08年、帝京大学医学部附属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に部長として赴任し、3つ目の「腫瘍内科」を立ち上げた。この間、様々ながんの診療や臨床研究に取り組むとともに、多くの腫瘍内科医を育成した。20年、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、21年には院長補佐となり、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、かつてのヨミドクターの連載「がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~」をまとめた、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある。

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