武井明「思春期外来の窓から」
揺れ動く思春期の子どもたち。そのこころの中には、どんな葛藤や悩みが渦巻いているのか――。大人たちの誰もが経験した「10代」なのに、彼らの声を受け止め、抱えている問題を理解するのは簡単ではありません。今を懸命に生きている子どもたちに寄り添い続ける精神科医・武井明さんが、世代の段差に橋をかけます。
妊娠・育児・性の悩み
偶然、父の浮気を知った高1女子 どうすれば…子どもの「今を生き延びる選択」
お父さんやお母さんの浮気を知った子どもたちは、どんな反応を示すのでしょうか。今回は、お父さんの浮気を知った女子高生を紹介したいと思います。
忘れ物が多く、部屋の片づけもできない
佳奈さん(仮名)は、注意欠如多動症(ADHD)で通院していた女子高生です。
会社員で長年、単身赴任中のお父さん、パート勤めのお母さん、小学3年生の弟との4人家族です。お父さんは数か月に1度、家に戻ってくるだけです。
佳奈さんは、小学校入学後から忘れ物が目立つようになりました。学校からのプリントを出すのを忘れるので、そのたびにお母さんに叱られていました。
中学校でも忘れ物が続き、部屋の片づけもできないということで、お母さんに付き添われ、思春期外来を受診しました。
佳奈さんはおしゃべりが得意で、初診時は、質問されていないことも話してきました。
お母さんは、
「忘れ物が多くて困ります。部屋の片づけも苦手です。おやつを食べた後の空き袋を床に散らかしたままなんです」
と述べていました。
ADHDの治療薬であるアトモキセチンを飲むことになりました。通院は2週間に1度の割合です。
薬を飲み始めて3か月後から、忘れ物が少し減りました。3年生になってからは、以前よりも授業に集中できるようになり、成績も少し上がりました。しかし、片づけは一向にできないままでした。
父の入浴中に携帯電話を見てしまい
第1志望の高校に無事入学できた佳奈さんは、野球部のマネジャーを務めるようになりました。社交的なので、すぐに部員とも打ち解けることができました。高校はロッカーに教科書を置いておくので、忘れ物はないということでした。
1年の秋に学校祭があり、野球部で模擬店を出すことになりました。その準備で忙しい時に、単身赴任のお父さんが、久しぶりに家に帰ってきました。この時、佳奈さんは、お父さんの入浴中に、何気なく携帯電話を見てしまいました。
この後の診察で、佳奈さんは、
「お父さんが、見知らぬ女性とメールのやり取りをしていることを発見したんです。『好きだよ』『愛している』『今度いつ会えるの』などと書かれていました。お父さんが浮気していると思って、すごくショックです。でも、お母さんには、かわいそうで言えません」
と泣き出しました。
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