山中龍宏「子どもを守る」
医療・健康・介護のコラム
ホットカーペットに赤ちゃんを放置しないで…重症化しやすい「低温やけど」 皮膚が壊死して再生不能に
これまで、熱湯など高温のものに触れたやけどについてお話ししてきましたが、今回は、比較的低温(約40~50℃)で生じるやけどについてお話しします。本人も気づかないうちに重症化しやすく、多くの場合、皮膚が 壊死 し、再生できなくなります。
肌着がめくれ、おなかが直接カーペットに
事例: 5か月26日の女児。2004年2月27日午前10時、自宅のリビングで、女児をホットカーペットの上に寝かせた。同10時半過ぎに抱き上げると、おなかが赤くなっていることに気づき、同11時20分に来院した。腹部に発赤があり(写真)、状況から低温やけどと診断し、ステロイド 軟膏 を処方した。3日後に電話で確認すると、皮膚は元の状態に戻っていた。
母親によると、ホットカーペットのスイッチは切ったつもりだったとのことです。抱き上げた時、肌着がめくれていて、おなかが直接、ホットカーペットに接触していたようです。寝返りが始まったばかりで、あおむけに体位を戻すことができず、腹部が長時間、温められたために、低温やけどになったと思われます。
短時間の接触ではやけどにならない程度の温度でも、長時間にわたって触れると低温やけどが生じます。皮膚が損傷を受ける温度と時間の目安は、44℃では3~4時間、46℃では30分~1時間、50℃では2~3分となっています。子どもや高齢者は皮膚が薄く、重症化しやすいとされています。
ほとんどが皮下組織に達する3度 皮膚は再生できず
低温やけどは、足、腰部、 臀部 など下半身に多くみられます。高温の熱源によるやけどでは、触れると熱くて痛いため、反射的に回避します。皮膚が熱源に触れる時間が短いため、損傷するのは表皮だけになります。一方、低温の熱源の場合、触れても痛みを覚えるほどではないため、長い間、熱源に触れたままになります。皮下脂肪も温められることになり、皮下脂肪層のたんぱく質が変性してしまいます。その部分にある動脈が 閉塞 し、血流が無くなって皮膚の壊死に至ります。
低温やけどは自覚症状が表れにくいことが特徴で、本人も気づかないうちに皮膚の奥まで損傷していることが多く、重症化しやすいことも特徴のひとつです。やけどは、損傷の程度によって1度、2度、3度に分けられていますが、低温やけどはほとんどの場合、皮下組織まで到達する3度となります。壊死した皮膚は再生できません。
低温やけどを起こしやすい製品には、使い捨てカイロ、湯たんぽ、電気あんか、こたつ、電気カーペット、電気毛布、石油・ガスファンヒーターなどがあります。足温器、バスや電車の座席、加温機能付き便座といったものでも起きることがあります。
予防するには、「直接、皮膚に暖房器具を当てない」「暖房器具が皮膚に当たっている場所を圧迫しない」「同じ場所に長時間、暖房器具を当てない」「熱さを少しでも感じたら、その時点で暖房器具を外すか離れる」「寝ているときには暖房器具を(できれば)使用しない」ことが原則です。
貼るカイロについて、日本カイロ工業会の注意表示には、「肌に直接触れないように衣服の上に貼って使用する」「眠るときには使用しない」「同じ場所に長時間当てず、1時間に1回程度、肌の状態を確認する」「同時に複数の袋を使用しない」「ベルトやサポーター、椅子などで押し付けて使用しない」「体に押し付けるようにして横にならない」「こたつ、寝具の中や、暖房器具の近くでは使用しない」といったことが挙げられています。
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