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なくせ!災害弱者<下>ドローンで道路の損壊や混雑を把握 避難遅れ防ぐ
災害時には、地域の状況をできるだけ早く、正確に把握し、避難行動をとることが重要だ。ただ、緊急時にはそれが難しく、混乱によって被害が広がる場合もある。どうしたら、より適切な避難につながるのか。新しいツールを活用する取り組みが始まっている。
高校生 道路・交通状況を把握
「周辺の状況に異変はないね」「次はもう少し上空から撮影してみよう」
兵庫県立東灘高の生徒らは2019年、災害避難に小型無人機「ドローン」を活用する取り組みを始めた。上空からの映像で道路の損壊の有無や混雑状況を把握し、その情報を住民の迅速な避難に役立ててもらうことが目的で、定期的に操縦を練習している。
同高がある神戸市東灘区の深江浜町は、約50年前に埋め立て地として整備された。卸売市場や事業所が立地する1キロ四方ほどのこの人工島で、働いたり、学んだり、暮らしたりしている人たちが高台に避難するには、対岸とつなぐ1本の橋で本土に渡るしかない。
「この町には、交通量があるのに幅が狭い道も多い。災害時、混雑状況や、救助に行きにくい場所に人がいないかをすぐに確認する必要があるんです」。ドローンでの写真撮影に興味があってこの活動に参加するようになったモレイラ・エリダさん(1年)は、橋を含めた避難経路の迅速な確認の重要性を説明する。
近くの食品会社から寄贈されたドローンは上空約200メートルまで飛行でき、人工島全体を見渡すことができる。災害の発生時には、国土交通省から飛行許可を得た上で、体育館などに避難した生徒らが安全に気をつけながら操縦し、橋が無事であるかどうかや、そこに向かう道路などの状況を確認する予定だという。
手元のタブレット端末で映像を確認しながらの飛行。油断すると機体が不安定になり、画像もぶれてしまうなど簡単ではないが、三谷量教諭(50)は「スマホなどのデジタル機器に親しんでいる世代で、習得も早い。いざという時に落ち着いて活動できるようにしたい」と話す。
活動への参加を希望した約15人が操縦技術を習得済み。後田裕太さん(2年)は「いつ災害が起きても、操縦できる人が必ず誰かいるように、多くの生徒に協力を呼びかけていきたい」と意気込む。
1995年1月の阪神大震災は、生徒たちが生まれる前だが、その日の記憶は地域に受け継がれている。
剣持春さん(1年)は小学生の頃の先生から、家族と共にはだしで飛び出し、たくさんの家屋が倒壊して火も上がる中、避難場所をさがして駆け込んだ、と大変だった避難の様子を聞いたことがある。「もし大きな災害が起きたら、地域の人たちができるだけ混乱なく、安全に避難できるよう力になりたい」と、この活動に熱心に参加している。
取り組みが始まって間もなく3年。避難する人が情報を手軽に活用できるよう、新たにツイッターなどのSNSに映像を配信する仕組み作りも進めている。剣持さんは「映像には、言葉よりも素早く伝わる強みがある。地域を守るための活用方法をさらに考えていきたい」と話す。
要支援者宅 マップで共有
寝たきりで自力避難は困難だという人は「赤」、歩けるが避難所にたどり着けない人は「黄」、早めに危険を知らせれば一人で逃げられるなら「緑」――。
長野県で20年4月、災害時に支援が必要な高齢者や障害者がどこに住んでいるのかを、インターネット上の「災害福祉カンタンマップ」で共有する取り組みが始まった。登録を希望した人の自宅の位置を、支援の緊急性によって3段階で色分けして示しておくことで、逃げ遅れを防ぐ。
19年10月の台風19号は、千曲川の氾濫など大きな被害をもたらした。当時、災害時に支援が必要な人の情報が紙の台帳で管理されていたこともあり、安否確認や支援に駆けつけた関係者との情報共有に時間がかかった。そうした反省を生かす新しい仕組みだ。
県社会福祉協議会が、都内のIT企業などの協力を得て運用している。現在の登録者は約3000人。民生委員や福祉専門職などの意見も聞いた上で、支援の必要度の色分けを行っている。
災害時、担当者が地図上の印をクリックすると、世帯構成や、認知症の状況、近隣の支援者の有無などを確認できる。県社協の橋本昌之さんは「車いすを使う人が住んでいるとわかっていれば、2人で支援に向かってもらうなど、的確な指示ができる」と話す。
個人情報にあたるため、権限を与えられた県内各地の社協や社会福祉法人、自治会が確認できるのは、それぞれが入力した対象者の情報に限っている。国土地理院のハザードマップを重ねて表示したり、避難所にたどり着いた登録者の情報を地図に反映したりする機能も備えている。
高齢者ら21人の情報を管理する小海町社協の新井忍さん(49)は「土石流や洪水のリスクのある場所に、どのような状態の人が取り残されているのかが一目でわかるのは大きい」と話す。
◎第2部は、板垣茂良、小野健太郎、平井翔子が担当しました。
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