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ペットと暮らせる特養から 若山三千彦 

医療・健康・介護のコラム

被災犬「むっちゃん」の物語…福島原発事故で奪われた平穏な日々、無人の地域で襲われ、それでも命を拾った

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被災犬「むっちゃん」の物語…福島原発事故で奪われた平穏な日々、無人の地域で襲われ、それでも命を拾った

「犬猫みなしご救援隊」のスタッフに抱かれるむっちゃん(右)と兄弟犬(「犬猫みなしご救援隊」撮影)

 ペットと暮らせる特別養護老人ホーム「さくらの里山科」は、今からちょうど10年前、2012年の4月1日に開設しました。東日本大震災、そして福島原発の事故から約1年後のことです。

 皆さんは、福島原発事故で避難を強いられた区域に、たくさんの飼い犬、飼い猫が取り残されたことをご存じでしょうか? そして大勢のボランティアが決死の覚悟で取り残された犬たち、猫たちの救出活動に取り組んでいたことを知っていたでしょうか? そんなボランティアの方々に救われた被災犬、被災猫を、わずか1匹ずつですが、「さくらの里山科」でも受け入れました。

 秋田犬にちょっと雰囲気が似ている白い雑種犬の「むっちゃん」は、福島県の楢葉町で暮らしていました。楢葉町は福島原発事故の時に全町避難した町です。民家の広い庭で、兄弟犬と2匹で飼われていました。穏やかで人懐っこいワンちゃんですから、きっとかわいがられていたのだと思います。兄弟犬と一緒に幸せに過ごしていたのでしょう。そんな平穏な日々は、福島原発の事故で奪われてしまいます。

 もちろん飼い主さん一家も、好きでむっちゃんたちを残したのではありません。用意されたバスでの一斉避難だったため、ほとんど荷物も持たずに家を出るしかなかったのです。そもそもペットは、バスに乗せてもらえませんでした。一時的な避難なので、ペットは置いていくようにと説明されたそうです。それがまさか、4年以上も避難が続くとは、誰も想像していなかったのでしょう。

 なお、私は、ペットを置いて緊急避難させた判断は間違っていないと思います。原発事故が発生し、 被曝(ひばく) の危険性がある状況下では、人命を最優先するのは当然の判断だったと思います。ただ、その後、取り残されたペットたちを実質的に見捨ててしまったことについては、もう少しやり方があったのではと疑問に感じますが、このことについては後にまた述べます。

 人に飼われている犬や猫は、人がいないと基本的には生きていけません。むっちゃんと兄弟犬は、庭でつながれていたので、餌を探しに行くこともできない状況でした。そんなむっちゃんを始め、避難区域に取り残された犬や猫たちの命をつないでくれたのがボランティアさんたちでした。

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若山 三千彦(わかやま・みちひこ)

 社会福祉法人「心の会」理事長、特別養護老人ホーム「さくらの里山科」(神奈川県横須賀市)施設長

 1965年、神奈川県生まれ。横浜国立大教育学部卒。筑波大学大学院修了。世界で初めてクローンマウスを実現した実弟・若山照彦を描いたノンフィクション「リアル・クローン」(2000年、小学館)で第6回小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。学校教員を退職後、社会福祉法人「心の会」創立。2012年に設立した「さくらの里山科」は日本で唯一、ペットの犬や猫と暮らせる特別養護老人ホームとして全国から注目されている。20年6月、著書「看取みといぬ文福ぶんぷく 人の命に寄り添う奇跡のペット物語」(宝島社、1300円税別)が出版された。

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