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産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」

 仕事をしていれば、ストレスはつきもの。それに押しつぶされてしまうと、病気の原因にもなりますが、適度なストレスは人生のスパイス。気持ちに張りができて、仕事にもプラスに働きます。ところが、ストレスがたまっていても自分では気づきにくいこともあります。大切なのは、ストレスに気づいて、上手にコントロールすること。精神科産業医として45年以上のキャリアを持ち、現在もいくつもの企業を担当する夏目誠医師が、これまで経験してきたケースを基に、ストレスへの気づきとさまざまな対処法を紹介します。きっと参考になる事例と出会えるでしょう。

医療・健康・介護のコラム

自分と向き合いたくない人が増えている…半世紀のカウンセリング経験で思う、SNS普及による変化

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自分と向き合いたくない人が増えている…半世紀のカウンセリング経験で思う、SNS普及による変化

イラスト 赤田咲子

 私は精神科医になって半世紀、産業医として40年以上、メンタル不調者に対してカウンセリングを中心に仕事をしてきました。日本でもうつ病と診断される患者が大幅に増えたり、認知行動療法といった精神療法が知られるようになったりする一方で、フロイトが創始した精神分析はあまり効果がないようなので、アメリカでも下火になったといった様々な変化がありました。ただ、カウンセリングをする際の私の基本姿勢は変わっていません。

 「自分と向き合ってください。その過程で自分の長所や短所が見えてきます。自分を客観的に把握すると、ストレスとどう対処すればよいかがわかります」と説明しています。

 特にストレスの原因について「私の対応にまずい点があった。皆に迷惑をかけて申し訳ない」と自責感を持つ人は良い効果が認められる傾向があります。自分の課題に気づき、自分を変える方向に踏み出すことができるからです。

問題は自分ではなく環境にある

 1980年代後半のバブル経済では、土地や金などに浮かれまくり、暴走のはてに崩壊。その後の給与も上がらない失われた20年の時代に入ったころから、カウンセリングを受けに来る方の様子が変わってきたように感じています。「自分と向き合いましょう」という言葉がピンと来ない人が増えたのです。

 カウンセリングに訪れると、「会社のこの働き方、賃金は上がらなくても残業が当たり前。上司の考えは古い。この環境が変わらないと」などと言って、周囲の問題点を指摘する人が増えてきました。確かにそういう面もあるとは思いますが、そうは言っても企業文化や上司は自分の都合では変わりません。ストレスを軽減して、この社会に適応するには、自分の課題を見つけ出して改めるのが近道です。そこでカウンセリングを勧めても「カウンセリングじゃ変わらないでしょう」と消極的な人とよく接するようになりました。

SNSの普及も人の心に影響

 この20年余りの間にインターネットやソーシャル・メディアが急速に普及してきて、そうした情報環境の変化も心に影響しているように思えます。近年は特にSNSのインスタグラムに代表されるフォロアー数や画像やブログに対しての、「いいね」の反応への関心が高いですね。これが自分を認めてもらいたいという人々の「承認欲求」を刺激しているのでしょう。私が思う「自分と向き合いたくない人」を紹介します。メンタル不調になり相談に訪れた29歳の若者です。

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夏目誠(なつめ・まこと)

 精神科医、大阪樟蔭女子大名誉教授。長年にわたって企業の産業医として従業員の健康相談や復職支援に取り組み、メンタルヘルスの向上に取り組んでいる。日本産業ストレス学会元理事長。著書に「中高年に効く! メンタル防衛術」「『診断書』を読み解く力をつけろ」「『スマイル仮面』症候群」など。新著は企業の人事や産業医向けの「職場不適応のサイン」ウェブ書籍「メンタル・キーワード療法~5分でできる簡易セラピー」。
夏目誠の公式ホームページ」「精神科医マコマコちゃんねる - YouTube

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