新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
ここは東京のとある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、毎月上下2回に分けてお届けします)
医療・健康・介護のコラム
ギラン・バレー症候群 目覚めたら「全身が耳たぶのように」なっていた
ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)

【今月のゲスト】
上田肇(うえだ・はじめ)さん
1959年、東京生まれ。大学卒業後、コンピューター企業の開発研究所に勤務。40歳でオーストラリアにプチ移住し、現地企業に転職。50歳で帰国後、ITコンサルタントとして活躍。2014年、55歳でギラン・バレー症候群を発症。人工呼吸器などの救命措置で生き延びるが四肢まひになり10か月ほど入院。何年ものリハビリの末、見た目は健常者になるまで回復できたが、様々な体のトラブルや後遺症に悩まされている。16年に患者会の活動を開始。米国の患者会とも協調し、18年から海外の患者会シンポジウムにも参加している。61歳で心筋梗塞(こうそく)で倒れるが復活。新型コロナに負けずに頑張る。下り坂の老後も楽しく生きるべく、心身の健康維持に取り組んでいる。
・ギラン・バレー症候群患者の会 https://www.gbsjpn.org/
ギラン・バレー症候群患者の会の上田肇さん(上)

オンラインで対談する上田肇さん(左)と筆者
上田肇さんにお会いするのは3回目だ。あるイベントで出会い、笑顔がすてきで、周りに合わせて話の内容を変えるなど、スマートで知的な大人の貫禄を感じていた。
上田さんの病気は「ギラン・バレー症候群」という。それまで、私は耳にしたことがなかった。
今日は、その上田さんが、カフェにお越しになっている。
私のカフェのコーヒーカップは、普通よりやや重い。コーヒーが冷めにくいようにと思って選んだのだが、上田さんは、私の入れたコーヒーを飲みながら、こう切り出した。
「最初はね、こういうカップが持ちにくいなぁって思ったんだよね」
今から7年ほど前、手に違和感が少しありつつ横になった彼は、翌朝目覚めて驚いた。
「朝、手足がほとんど動かないんです。仕方がないので、床をはって移動しました。手指の先が動かせないため、救急車を呼ぼうにもスマートフォンがなかなか操作できませんでした。なんとか電話ができたのですが、家には自分しかいなかったため、救急隊のために玄関の鍵を開ける必要がある。その鍵を開けたところで、力尽きたんだよね」
そのまま玄関に倒れこんだ上田さんの目には、救急隊員の姿が、光り輝いて頼もしく映ったという。
1 / 3
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。