文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

ヘアアイロンの温度は200℃…足を挟んだ3歳児 やけどで一か月以上通院

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 これまで、蒸気や熱湯によるやけどについてお話ししてきましたが、今回は、家庭内の家電製品に触れて、やけどをするケースについてお話ししましょう。

ヘアアイロンの温度は200℃…足を挟んだ3歳児 やけどで一か月以上通院

イラスト:高橋まや

子どもの手足は髪を挟む面に入ってしまう

 最近、私のクリニックで、ヘアアイロンでやけどをした子どもを診る機会がありました。ヘアアイロンは、熱により髪をスタイリングする道具で、お母さんたちにとって必須アイテムです。子どもがやけどをするシーンを想像してみましょう。

 髪を整えている母親の脇に幼児がいて、興味深く見ている。髪のウェーブの状態をチェックしたり、くしを使ったりするため、母親はヘアアイロンを台の上に置く。子どもは、自分もやってみたいと、ヘアアイロンのこての部分を手で握ってしまう。

 ヘアアイロンは髪を挟む内側(こて部分)しか熱くなりませんが、その部分は、電源を入れると約30秒で100℃に達する製品もあります。多くは、使用時に150~200℃となり、電源を切ってもすぐには安全な温度まで冷めません。ヘアアイロンの髪を挟む面は、大きいものでは幅が約4センチもあり、小さい子どもの手足はほとんど入ってしまいます。形も棒状なので、子どもがつかんでしまいがちです。子どもの皮膚は薄いため、やけどになってしまいます。手は届かないだろうと思って、テーブルなどの上に置いていても、コードを引っ張って落下させ、やけどをすることがあります。

 私のクリニックでヘアアイロンによるやけどの子を数人診たということは、日本中ではその数百倍以上、同じことが起こっているということです。

足にやけどをしたケースも

 消費者庁の「子ども安全メール」でも、たびたび注意喚起が行われています。それらの事例を見ると、手のひらのやけどが多いのですが、足にやけどをしたケースもあります。1~2歳児がほとんどを占めています。典型的な事例を「子ども安全メール」から挙げてみましょう。

 「床に置いて加熱中のヘアアイロンを子どもが踏んでしまい、右足に2度のやけどを負った」(2歳)

 「保護者がヘアアイロンを使用後、電源を切ってテーブルの上に置いていた。数分後、子どもがコードを引っ張り、落下したヘアアイロンの加熱部分に触れ、手のひらにやけどを負った」(1歳)

 「子どもの足が、ヘアアイロンの髪を挟む部分にすっぽりとはまってやけどした。すぐに水で30分以上冷やし、病院を受診したが、やけどは3度に近く、1か月以上通院した」(3歳5か月)

 「保護者が、リビングの床に210℃に設定したヘアアイロンを置いていた。子どもが触ってしまい、手のひらに1~2度のやけどをした」(0歳)

 「床に置いてあった、熱したヘアアイロンに子どもがかかとを挟んでしまい、2度のやけどをした」(5歳)

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

yamanaka-tatsuhiro_prof

山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

山中龍宏「子どもを守る」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事