山中龍宏「子どもを守る」
子どもは成長するにつれ、事故に遭う危険も増します。誤飲や転倒、水難などを未然に防ぐには、過去の事例から学ぶことが効果的です。小さな命を守るために、大人は何をすればいいのか。子どもの事故防止の第一人者、小児科医の山中龍宏さんとともに考えましょう。
妊娠・育児・性の悩み
ヘアアイロンの温度は200℃…足を挟んだ3歳児 やけどで一か月以上通院
使用中のアイロンは200℃
アイロンによるやけどもよく見られます。 国民生活センターが行った実験 では、アイロンのかけ面は、電源を入れてから50秒以内に、少しでも触れるとやけどのおそれがある70℃に達し、使用中は200℃を超えます。70℃に下がるまでには20~60分かかっていました。このデータから、使い終わった後のアイロンに子どもが触ってやけどをすることがよく理解できると思います。
その他にも、いろいろな家電製品で、子どもがやけどしています。
「リビングにあるガスファンヒーターの吹き出し口の前に子どもが移動して受傷した。隣室にいた保護者が、子どもの泣き声で気づいた。足は赤く腫れ、 水疱 ができて破れており、2度のやけどを負った」(0歳)
「子どもが祖母宅の石油ストーブに触って、両手のひらをやけどした」(1歳)
「夕食に鍋料理を食べ、後片付けをしていたところ、子どもがホットプレートを触り、右手の手のひらにやけどを負った。ホットプレートは、電源をオフにしてから5~10分程度たっていた」(1歳)
「使い終わったフライパンをガス台の上に置いて洗い物をしていたところ、子どもが手を伸ばして取っ手を引っ張った。落ちてきたフライパンが子どもの頬と腕に当たり、水ぶくれを伴うやけどを負った。フライパンは使用してから2~3分がたっていたが、まだ熱かった」(1歳)
「使用後の魚焼きグリルのガラス面を数秒間触ってしまった。左手全体が赤くなり、水ぶくれを伴うやけどを負った」(1歳)
「使用後のIHクッキングヒーターに右手をついてしまい、手のひらと親指に水ぶくれを伴うやけどを負った」(4歳)
家庭内にある熱源を調べたデータを見ると、やかん表面200℃、アイロンを消した直後90℃、石油ファンヒーター吹き出し口81℃、ホットプレート125℃、電気ストーブ171℃、パネルヒーター放熱板(強)53℃・排気部(強)185℃、電球(100W)143℃、フライパン76℃と報告されています。
なぜこれらの器具でやけどするのか?
これらの器具が熱くなっていることが理解できない乳幼児が、器具の置いてある空間にいるため、やけどが多発しているのです。保護者にも「熱い」ということは目に見えないため、危険性を十分に認識することができません。
家電製品については、熱くなる部分に液晶の温度計を貼付して、例えば「50℃以上になると赤色に変化する」といったような設定にし、温度を「見える化」して危険性を伝えるといいと思います。あるいは、熱を感知するアプリを開発し、スマホをかざすと50℃以上の熱いものが見えるようにするのもいいと思います。生後7~8か月から1歳の子どもがいる家庭では、こうした対策が必要です。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)
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