武井明「思春期外来の窓から」
医療・健康・介護のコラム
中2で不登校「ゲームがすべて」と言った男子 今は家事を手伝い通院も休まず…「稼げる大人」だけが目標か
思春期外来で出会った子どもたちの最終的な治療の目標は何だろうか、と考えることがよくあります。さまざまな症状が消失した後、社会に出て仕事に就ける大人になることなのでしょうか。今回は、そのようなことを考えさせてくれた子どもを紹介します。
自宅でオンラインのゲームに没頭
悠斗君(仮名)は不登校ということで、思春期外来を受診した男子中学生です。
お父さん、お母さんとの3人家族。お父さんは非常に仕事熱心な人で、悠斗君と顔を合わせることがほとんどありません。お母さんは専業主婦で、悠斗君の行動にあれこれと口を出し、やや干渉的なところがあります。
悠斗君は幼稚園時代から、大きな音を怖がる子でした。皮膚感覚の過敏さもあり、長袖の服を嫌がって、いつも半袖の服ばかり着ていました。
小学校に入学してからは、おとなしくまじめで、自分から積極的に同級生に話しかけるということはありませんでした。中学校入学後から、同級生に「死ね」「学校に来るな」などとたびたび言われるようになりましたが、我慢して登校していました。
2年生になってから、朝になると頭痛や腹痛を訴えて学校を休むようになりました。自宅ではオンラインのゲームに没頭し、昼夜逆転の生活を送るようになりました。近くの小児科を受診しましたが、体の異常はみつかりませんでした。そのため、2学期になって、小児科の紹介で思春期外来を受診しました。
「自立できない大人になってしまう」と泣く母
初診時の悠斗君は、うつむいたまま、小声で質問に答えてくれましたが、口数は多くありません。同伴したお母さんが、これまでの経過を話してくれました。
「悠斗が将来困ると思って、登校しなさいと毎朝強く言ってきました。このまま登校できないと勉強が遅れ、高校へも進学できません。社会に出てからも自立できない大人になってしまいます」
と言って泣き出しました。
2週に1回、お母さん同伴で通院してもらうことにしました。
通院を始めて3か月がたっても、悠斗君の不登校は続きました。診察室ではほとんど話をしてくれないので、診察のたびに主治医とオセロをすることにしました。悠斗君はけっこう強くて、主治医を負かすことも時々ありました。
同伴したお母さんは、
「オンラインゲームばかりして困ります。電源を抜いたこともあります。それでもゲームをやめてくれません。不登校のままだと、大人になってひきこもりになるのではないかと心配です。何とか登校させなくてはと思い、お小遣いを渡したり、欲しがる物を買い与えたりして登校させようとしてきました」
と述べていました。
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