がん患者団体のリレー活動報告
医療・健康・介護のコラム
RinRin(りんりん)の会
「乳がん」という病気と診断され,治療に対する不安と闘いながら、「つらい思いを誰かに聞いてほしい」「同じ体験をされた方とお話をしたら救われるかもしれない」という患者さんの思いにこたえるために、「りんりんの会」が設立されました。宮城県大崎市の大崎市民病院に通院する患者らが中心となって、勉強会や交流会などを開催しています。
乳がん体験者同士の交流
私は、会の代表を務める高橋修子と申します。2001年11月、大崎市の検診受診後に紹介された大崎市民病院乳腺外科で、初めての診察時にがんの告知を受けました。その直後から、自分の病気のことを「話せる場所がない、話せる人がいない、必要な情報収集ができない」ことで、不安から抜け出せず、とてもつらく苦しい日々を過ごした経験がありました。
その経験をもとに2004年10月、乳がん患者会「りんりんの会」を設立しました。第1回お茶会は3人でスタートしました。設立以来、毎月、定例会を開いて患者同士の交流を深め、現在では60人の会員で活動しています。
「凛」「輪」「鈴」
「RinRin(りんりん)」とは、
凛 (りん)
何事にも揺るがずに 凛として しっかり前を向いて歩いていきたい!… 自分のために!
輪 (りん)
一人では何も出来ず落ち込んでしまう時に、「一人じゃないよ」「仲間がいるよ」と伝えて支える 輪 を広げていきたい!… 仲間のために!
鈴 (りん)
つらい体験者を増やしたくないという思いを社会に伝え、会の活動が広く RinRin と響いていきますように!… 社会のために!
という意味を含んでいます。
ヨガ、温泉に入ろう会も
RinRin(りんりん)の会は、乳がんで苦しんでいる方に寄り添い、互いに支え合い、凛として生きていけるようになるためのお手伝いをしている小さな患者団体です。
定例会では、おしゃべりするだけにとどまらず、勉強会(認定看護師や後期研修医の講話、食事、臨床心理士の講話など)、親睦交流会(ヨガ、アロマセラピー、クリスマス会、フラダンス講習会など)、そして移動研修会(温泉に入ろう会、ハイキング)などの活動を継続してきました。
また、広く一般の方にも「早期発見・早期治療の大切さ」と「り患しても集える場があることを知ってもらう」ということを目的に2005年から毎年、医師を招いた乳がん勉強会である「りんりん研修会」を継続して開催しています。
乳房切除後の補整用パッドの作製
もう一つ大切な活動として、乳房切除後の補整用パッドの作製があります。
市販されているものでは自分に合わない方が多くいることを知り、2016年に「りんりんパッド」を考案しました。
安価で簡単に作製できるもので全国から問い合わせがあり、県内外に赴きパッド作りの講習会を開催しています。このような活動を通じて多くの患者さんとの交流も図っています。
図書館などに常設の「相談室」
大崎市内の薬局の一室を無償でお借りし、患者会には都合がつかなかったり、なかなか勇気がなくて参加できなかったりする患者さんを対象とした「相談室」を2009年1月から9年間、開設しました。悩みや不安などを気兼ねなく話したり、スタッフの体験を聞いたりすることができます。「自分だけじゃないと思い、治療に前向きになった」「仕事に復帰できた」などの感想をいただきました。
2018年10月から大崎市図書館(研修室)に場所を移した形で継続しています(コロナのため当面は休止中)。
大崎市民病院などでピアサポート活動
これらの経験から病院に「患者が話せる場所」「話せる人」「身近な情報」があれば、救われる患者さんがいるという思いが強くなり、2014年から、常設となった大崎市民病院がんサロンでピアサポーターとしてボランティア活動を開始しました。
その活動が広く知られるようになり、宮城県の「がんピアサポーター養成」に関するワーキングに参加することとなり、また、医療者との連携を図りながら患者に寄り添えるピアサポーターの人材育成にも力を入れています。
その実績を認めていただき、会の代表を務める高橋が、2019年4月からパート職員として採用され、現在は2か所の病院で「がんピアサポーター」として勤務しています。
まだまだピアサポーターの重要性は広く認識されているとは言えませんが、コロナ禍で患者さんが集まることができない今も、りんりん通信を発行したり、ピアサポーターとしての活動を続けたりしています。ピアサポーターとして患者さんの一助になりたいと考えています。
RinRin(りんりん)の会
2004年に設立。宮城県大崎地域を中心に活動。現在の会員数は60人(スタッフ8人で運営)。
「ひとりじゃないよ! 仲間がいるよ!」の言葉通り、定例会(おしゃべり会、勉強会など)、研修会、温泉に入ろう会、若年層対象の集いの開催など、患者のニーズに合わせた活動を心がけている。
がん体験者にしか分からない傷の痛み、心の痛みを共に分かち合い、体験を広く社会にも伝えていくことで悲しい思いをする方を減らしたいというビジョンを持つ。コロナ禍でも患者を孤立させないために、病院内サロンでの「がんピアサポーター」としての活動にも取り組む。
このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。
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