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おひとりさまの終活「生前契約」で安心 葬儀や部屋の片付け…NPO法人などが手続き代行


「説明会の空きはありますか」。終活に関する生前契約を扱うNPO法人・りすシステム(杉山歩代表理事)に、東京都内で一人暮らしをする70歳代の男性が慌てた様子で電話してきた。手術のため、急きょ身元保証人が必要になったという。
杉山代表理事は、「一人暮らしの方は、入院時などの身元保証人が必要になったことをきっかけに、終活の相談に来られるケースが圧倒的に多い」と話す。
「おひとりさま」の場合、頼れる家族や親族がいないケースが多く、本人が亡くなった後、誰に葬儀や部屋の片付けをしてもらうかが問題となる。
そんな場合、死後の手続きなどを代行してくれるNPO法人などと「生前契約」を交わすのも選択肢だ。「生前契約を通じて法人が家族の代わりになる。死後に確実に実施してくれる状態まで用意しておけば安心」と杉山さん。
生前契約には入院時の身元保証人や生活支援などの「生前事務」と、死んだ後の「死後事務」の2段階がある。りすシステムではこの2段階について、終末期医療の希望や葬儀の方法などを本人とやりとりしながら企画書にまとめ、必要予算を確認して契約する。標準的な契約なら100万円程度必要で、死後の希望の多さや片付ける家の広さに応じて費用が変わるという。
■「任意後見契約」も
身近に頼れる家族のいない場合、自分が認知症になった時への備えとして、「任意後見契約」も選択肢になる。契約は公証人が作成する「公正証書」とすることが多い。
死後事務は、弁護士や司法書士、企業などでも契約を受け付けている。ひつぎに入れてほしい写真や祭壇に飾ってほしい花といった細かい希望を聞いてくれることもある。
ただ、自分が継承している先祖代々のお墓に入る人は注意が必要だ。自分の死後、墓の継承者がいなくなってしまう場合は、寺や霊園から断られるケースがあるという。その場合、継承者を探したり、「墓じまい」をしたりする必要がある。
おひとりさまの場合、終活をしていることを意識的に周囲の人に伝えておくことが大切だ。駆けつけた親族らが生前契約に気付かず、契約が履行されないケースもあるという。担当のヘルパーや民生委員、勤務先などに終活をしていることを伝えておくのも手だ。(石井千絵)
「遺贈寄付」で社会貢献

遺産を相続させたい身内がいない場合、社会貢献活動をする団体などに寄付する「遺贈寄付」という方法がある。「日本承継寄付協会」代表理事の三浦美樹さん(41)=写真=に聞いた。
遺贈寄付の良さは、老後に好きなだけお金を使って、死後残った分から寄付できることです。老後資金の不安感がありません。遺贈寄付する場合、遺言書で記すのが確実です。少額でも大丈夫です。

遺贈寄付には全財産を寄付する「包括遺贈」と、金額や不動産を指定する「特定遺贈」があります。包括遺贈では、本人の負債も寄付先が負うことになります。受け付けていない団体も多いので事前確認が必要です。また寄付額が大きくなるほど、トラブルは起きやすい傾向があります。司法書士や弁護士に相談しながら手続きを進めるのがよいでしょう。
おひとりさまは、「遺産を残したい人がいない」と、遺言書を残さない人も多いのですが、親やきょうだい、おいやめいもいないという人は少なく、疎遠だが相続人がいる場合が少なくありません。こうした親族が集まって行う遺産分割協議は、手数料や手間がかかり、不満が残ることもあります。
お金は元気なうちに使ってほしいのですが、残った分を応援したい団体に託すことは、満足度の高い使い道の一つです。(談)