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Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」

医療・健康・介護のコラム

「抗がん剤が効かなくなったので別の薬に変える」と言われました。とても不安です

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「抗がん剤が効かなくなったので別の薬に変える」と言われました。とても不安です

イラスト:さかいゆは

 遠隔転移のある進行がんでは、積極的治療の中心となるのは、抗がん剤などの薬物療法で、いろいろな薬が順番に使われます。患者さんを支える「緩和ケア」は、どんな状況でも常に継続して行いますが、がんをたたく「積極的治療」については、継続するか、お休みするか、変更するか、といった決断を迫られることがあります。薬物療法の場合、効果が得られていれば、副作用が問題ない限り継続することが多いですが、効果がなかったり、副作用が強くなったりした場合には、中止を検討します。薬物療法の選択肢はいろいろとありますので、一つの薬を中止した場合、別の薬に切り換えることが多いわけですが、そういう「治療変更」に不安を感じている患者さんが多いようです。

薬が変わるたびに別の副作用 永遠に闘っているようで…

 今回、治療変更について、質問をいただきました。

 今まで頑張って続けてきた薬が効かなくなったのもショックですが、次の薬に変わるのも恐怖です。これまでもずっと、副作用対策に心を削ってきたわけですが、次の薬でも別の副作用と向き合っていくと考えると、重くつらい気持ちになります。薬が変わるたびに、いろんな副作用が重なっていき、永遠に闘っているようで疲れます。つらければ休んでもいいと言われますが、それもこわくてできません。病気も進んで、薬も変わって、これからどんなことが起きるのかと、ネガティブなことばかり考えてしまいます。どんな心持ちでいればいいのでしょうか?

 私からのアドバイスは、こうです。

  • 〈1〉治療を変更しても、休んでも、目標に向かって進むことに変わりはありません。
  • 〈2〉プラスとマイナスのバランスを考え、医療者とよく話し合いましょう。
  • 〈3〉治療よりも生き方を中心に考えましょう。

効果はがんの大きさより、「いい状態で長生き」につながること

 進行がんに薬物療法を行って、がんの大きさが明らかに縮小する確率(奏効率)は、がんの種類、病気の状況、薬の種類によっていろいろですが、10~50%程度のことが多いです。50%の奏効率というのは、医師からみると「よく効く薬」となるわけですが、効くのが半分にすぎないとなれば、「それだけ?」と思う方が多いかと思います。ただ、「がんが小さくなること」が本当の意味での「効果」というわけではなく、奏効率で判断するのはあまり適切ではありません。

 真の効果とは、患者さん一人ひとりの目標に近づくことであって、治療が「いい状態で長生き」につながるのであれば、がんの大きさがどうであれ、それは「効いている」ということになります。ただ、長生きにつながっているかどうかを評価するのは困難なため、評価の容易な「がんの大きさ」を見て、便宜的に効果判定しているわけです。CT(コンピューター断層撮影)などの画像検査を行って、がんが明らかに大きくなっている場合は、「効いていない」と判断し、治療を中止します。がんが小さくなるか、大きさが横ばいの場合は、治療を継続します。一つの薬物療法を継続する期間もいろいろで、開始早々に中止になる場合から、何年も継続する場合までありますが、平均すると半年くらいです。

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高野 利実 (たかの・としみ)

 がん研有明病院 院長補佐・乳腺内科部長
 1972年東京生まれ。98年、東京大学医学部卒業。腫瘍内科医を志し、同大附属病院や国立がんセンター中央病院などで経験を積んだ。2005年、東京共済病院に腫瘍内科を開設。08年、帝京大学医学部附属病院腫瘍内科開設に伴い講師として赴任。10年、虎の門病院臨床腫瘍科に部長として赴任し、3つ目の「腫瘍内科」を立ち上げた。この間、様々ながんの診療や臨床研究に取り組むとともに、多くの腫瘍内科医を育成した。20年、がん研有明病院に乳腺内科部長として赴任し、21年には院長補佐となり、新たなチャレンジを続けている。西日本がん研究機構(WJOG)乳腺委員長も務め、乳がんに関する全国規模の臨床試験や医師主導治験に取り組んでいる。著書に、かつてのヨミドクターの連載「がんと向き合う ~腫瘍内科医・高野利実の診察室~」をまとめた、「がんとともに、自分らしく生きる―希望をもって、がんと向き合う『HBM』のすすめ―」(きずな出版)がある。

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