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「痛い」「恥ずかしい」…敬遠されがちな大腸内視鏡検査 受けやすくする工夫も

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 大腸がんの予防や早期発見に役立つ大腸内視鏡検査は、薬剤を服用する負担や検査中の脱衣への羞恥心などから敬遠されがちです。医療現場では、より検査を受けやすくする工夫が取り入れられたり、検査の精度を高める人工知能(AI)が登場したりしています。(辻田秀樹)

がん早期発見に

 大腸内視鏡検査では、直径1センチほどの内視鏡を肛門から挿入し、腸内の状態を確認します。内視鏡を盲腸まで到達させ、抜きながら10分程度、観察します。

 がんを部位別にみると、国内で患者数が最も多いのが大腸がんです。40歳代から増え始めるため、40歳以上には便に血液が混ざっていないかを調べる便潜血検査が推奨されています。異常が分かれば、内視鏡検査で詳しく調べ早期発見につなげます。がんになる恐れがあるポリープを治療することで死亡率を半減させるとの研究もあります。

 ただし、これらの検査を受ける人の割合は伸び悩んでいます。便検査の受診は、厚生労働省の2019年の国民生活基礎調査では、男性47・8%、女性40・9%。また、日本消化器がん検診学会のまとめでは、18年度に便検査を受けた約470万人のうち5・6%に異常が見つかったものの、大腸内視鏡検査を受けたのは6割にとどまりました。

負担や抵抗感も

 受診が進まないのは検査に伴う心身の負担も影響しているようです。具体的には、前日に下剤を服用した上で、〈1〉便を出し切るために検査当日にも腸管洗浄液を使用〈2〉内視鏡挿入時の痛み〈3〉お尻を見られる羞恥心――などが挙げられます。

 大腸の持病がある記者(44)は、経過を確かめるため10年以上前から毎年、内視鏡検査を受けています。腸管洗浄液は水とともに1時間以上かけて飲まねばならず、毎回気が進まないのですが、昨年飲んだものは、オレンジ風味でした。スポーツドリンクやかんきつの風味など、飲みやすい薬剤の開発が進んでいます。

 内視鏡挿入時の苦痛に対しては静脈麻酔を使う医療機関が増えているようです。

 また、検査でお尻を見られることに抵抗感を抱く人も少なくありません。東京都港区の「赤坂内視鏡クリニック」では、お尻をタオルやブランケットで覆うようにしています。

 同クリニックで昨年秋に検査を受けた主婦(54)は、ポリープが複数見つかり、内視鏡治療で取り除いてもらいました。主婦は「別の医療機関で検査を受ける時には、いつもためらいがありました。少し配慮をしてもらえれば、受けやすくなるでしょう」と言います。

 院長の中村尚志さんは「新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、一時は検査を見合わせる人が相次ぎました。早期発見のためにも、安心してスムーズに受けてもらえる環境を維持したい」と話しています。

 内視鏡検査でがんを見極めるには、医師の経験や技術の差が表れやすいとされています。こうした差を補うAIを駆使したソフトウェアが開発されています。複数のメーカーがすでに厚労省の製造販売承認を受け、医療現場で導入されはじめています。大腸がんの疑いがある病変を的確に見つけることに期待が寄せられています。

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