文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

大橋博樹「かかりつけ医のお仕事~家族を診る専門医~」

医療・健康・介護のコラム

潜伏期間短いオミクロン株 数時間差で家族全員が発熱も…怖いのは基礎疾患ある人と高齢者の感染[大橋博樹医師]

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

オミクロン株はのどに症状 重症者も肺炎ではない

――オミクロン株は、のどに症状が表れて、重症化しにくいと言われていますが、診療現場の実感としてはいかがですか。

 昨年のデルタ株の患者さんは、呼吸器に症状が出て診察室でゴホゴホされていました。オミクロンの場合は、のどが痛くて、「ウウン」って(せき)払いをする方が多いですね。それに、頭痛がある方が結構いらっしゃいます。症状からは、新型コロナなのか、風邪ともインフルエンザとも判断はつきません。症状には個人差が大きくて、インフルエンザのように40度近い熱がポンと出てぐったりしている人がいれば、特につらくはない方もいます。ただ、若い人や基礎疾患のない方は、怖がることは全くないだろうと思います。

――オミクロン株で重症化する患者さんも経験されましたか。

 入院された高齢者の方が数人いますが、デルタ株の時とは全く病状が違います。デルタ株では若くても肺炎で亡くなる方がいて、医者として恐怖感がありました。高齢者も含めて重症度を測るのは、肺炎になっているか、血中の酸素飽和度がどうかでした。一方、オミクロン株で重症化する高齢者は、私が診ている範囲では、肺炎ではなく、食欲が低下して水分が取れなくなって脱水状態で全身状態が悪化した人や、糖尿病など基礎疾患が悪化した患者さんです。高齢者に感染が広がって、こうした患者さんが増えると怖いと思っています。

高齢者のデイサービスでクラスターも

――国は、感染が広がっている地域にまんえん防止等重点措置をとっています。こうした対応をどのように受け止めていますか。

 飲食店の営業時間や酒類の提供制限はよく市民に浸透しています。ただ、今回は、家庭や高齢者施設、保育園での感染が多く、飲食店以外で必要な対策についての理解が十分に広がっていないように思います。高齢者のデイサービスは感染予防対策の施設間の格差が大きくて、利用者10人ぐらいがテーブルを囲んで一緒に食事をし、クラスターが発生した例が地域で出ています。家族から感染して微熱程度の方が、デイサービスの活動に参加して広がったというケースです。食事の時間をずらすとか、対策が必要だと思いました。利用者がマスクをしていない施設もあります。保育園では、年長さんぐらいにならないとマスクは難しいと思いますが、大阪で行っているような保育園の登園自粛の呼びかけも必要かなと思います。園児に陽性者が出て閉園するリスクを少しでも下げるためです。

対策を緩めるのは高齢者の重症化への影響を見極めてから

――実際には、感染者の多くが風邪やインフルエンザと変わらない症状のようですが、これだけ感染者が多くなると、濃厚接触者が増え、長く自宅療養しなければいけないルールが社会活動の制約になっています。ここまでの行動制限は必要なのでしょうか。

 うちの診療所のスタッフにも陽性者が1人、濃厚接触者が1人いて療養中ですし、近くの病院でも休まざるを得ない人が出てきていて、感染を広げないためのルールが医療現場逼迫(ひっぱく)の原因のひとつになっています。とはいえ、オミクロン株は若い人には問題にならないという考えには同意するものの、高齢者や基礎疾患のある人が感染しても重症化しないということが見極められる時期ではありません。それにオミクロンの次に出てくる変異株が、弱毒化するかどうかもわかりません。医療者として、行動制限は必要な措置だと考えています。

――3回目のワクチン接種の重要性を訴えてこられましたが、なかなか進んでいませんね。

 3回打てばオミクロンにも7割の有効性があるというデータがあるので、この結果を受け止めて3回目を進める必要があります。川崎市でも2月から本格的な接種が始まります。2回打って、3回目をちゅうちょする方もいるようですが、一般にワクチンは、3回打ってひとつのパッケージですので、そこを迷うのはアンバランスな感じがします。副反応が強かったモデルナも、3回目は半量なので、副反応は少なくなったというデータが集まっています。ワクチンそのものを打つか打たないかの考えはそれぞれあると思いますが、医療側としては、すでに2回打った人が3回目を打つのは当然と考えています。

――新型コロナはこれからどうなると思いますか。

 今は発熱外来で希望する患者さんを受けられない状態ですから、この波でおぼれないように、どうやって患者さんを受け入れていくかを考えるだけで精いっぱいです。先の見通しとなると、一般のみなさんと同じで、この波の先行きが来週か再来週には見通せて、終わりが見えてくれば本当にいいなぁと願うのみです。ただ、クリニックを預かる身としては、さらに、「次の波」が来ることも考えておかなければいけないと思っています。

2 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

20211222_ohashi-hiroki_profile

大橋博樹(おおはし・ひろき)

多摩ファミリークリニック院長、日本プライマリ・ケア連合学会副理事長。
1974年東京都中野区生まれ。獨協医大卒、武蔵野赤十字病院で臨床研修後、聖マリアンナ医大病院総合診療内科・救命救急センター、筑波大病院総合診療科、亀田総合病院家庭医診療科勤務の後、2006年、川崎市立多摩病院総合診療科医長。2010年、多摩ファミリークリニック開業。

大橋博樹「かかりつけ医のお仕事~家族を診る専門医~」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事