備える終活
医療・健康・介護のコラム
自分の死後、どうする?…「家じまい」 元気なうちに家族と話そう
「自宅をリフォームして今後30年は維持できるようにし、最後まで住み続けることを決めました」。約4年前、夫婦の老後を見据えて自宅を改修した東京都国分寺市の佐藤一治さん(74)が振り返る。
1986年に建てた2階建ての自宅は築30年を超え、すでに2人の娘たちは独立。水回りや床下の老朽化が進んでおり、子どもたちに資産を残すことも考えて不動産コンサルタントに相談した。新築や住み替えのケースも含めて提案を受け、費用を抑えて住み心地を高められる改修に決めた。
基礎や屋根の改修、耐震補強、断熱対策などのほか、「将来転ばないように」と階段の手すりを追加。部屋と廊下の段差もなくした。独立していたリビングとダイニングをつなげ、親族が集える場にした。
佐藤さんは「結果として家族の思い出がある家も残り、満足している。今後も必要に応じて改修し、最後は子どもたちに処分してもらうつもりだ」と話す。
相続も考慮を
子どもの独立後や、自分が死んだ後の住まいについて考える「家じまい」には、自宅を売却して住み替える選択肢もある。
東京都立川市の有料老人ホームに夫婦別室で住んでいる野沢秀雄さん(81)と妻の芳子さん(77)は、渋谷区の自宅マンションの売却に向け、一緒に家財道具を整理している最中だ。
老後に頼れる子どもや親族がいないことや、お互いの趣味などを考え、2020年に秀雄さんが先に老人ホームに入居。自宅に住み続けていた芳子さんも股関節が悪化。「元気なうちに共有名義の自宅を売却しよう」と話し合い、昨年10月から専門家の助言を受けて整理を始めた。

不動産コンサルタント(右)と相談する野沢さん夫婦(東京都渋谷区で)
直後に秀雄さんは脳 梗塞 で倒れて入院。12月に退院できたが、「今後お互いの健康状態がどうなるかわからないからこそ、不動産の処分など将来の希望を早めに共有しておくことが大切だと痛感した」と話す。
高齢者の住宅事情に詳しい不動産コンサルタント事務所、ネクスト・アイズ代表の小野信一さん(58)は「家じまいでは老後の生活を中心に、相続なども考慮することが必要になる。専門家に相談して客観的な視点を持ち、方向性を見いだしておくことが大切だ」と指摘する。
自宅を所有する親が認知症になって処分の意思が確認できなかったり、相続人の間でトラブルになったりして、処分が進まないケースも多いという。
小野さんは「家をどう処分してもらうのか意思を明確にし、エンディングノートなどで相続人に伝えておくとよい」と話している。(田中文香)
早めに家族と話し合い

家じまいに関わる問題は、自宅の売却や引っ越し先選び、相続など多岐にわたる。高齢者の住み替えに関する総合相談窓口を運営する一般社団法人「日本シルバーサポート協会」の代表理事で、行政書士兼宅地建物取引士の藤井智英さん(56)=写真=にポイントを聞いた。
高齢者のベストな住まいは、健康状態や介護の必要性、予算、住みたい地域などによって千差万別です。認知症になった時のリスクに備え、元気なうちに、先々のことを考えて早めに家族と話し合い、合意しておくことが大切です。
エンディングノートを使って、持ち家などの財産を誰がどう相続するかを書き残したり、家財道具を整理したりしながら、次の住まいに移る心構えをしておくと安心です。自宅や土地の権利書や印鑑証明書の置き場所を家族と確認しておくといいでしょう。
高齢者施設などに入居する際、「持ち家を手放したくない」という相談も受けます。売却した時の税の控除や相続、空き家にした場合の管理の問題なども含め、メリットとデメリットをよく考える必要があります。
安心できる老後の住まいを確保するため、役所の終活セミナーや地域包括支援センターなどで情報収集し、継続的に助言してくれる専門家に相談してみてください。(談)
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