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もの忘れやミスが増えたらMCIかも…認知症の手前で見つけ、進行遅らせる

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 もの忘れが目立つ、仕事や家事でミスが増えた――。そんな記憶力や判断力の低下がみられても、日常生活への支障が少ない状態を「軽度認知障害(MCI)」と呼びます。この時点で生活習慣を見直すなどして、認知症への進行を遅らせる取り組みが始まっています。(影本菜穂子)

生活習慣見直し

 MCIと認知症との境目は、自立して生活できるかどうかです。脳に異常なたんぱく質がたまるアルツハイマー病でも、ほぼ、これまで通りに過ごせている段階ならば、認知症ではなくMCIとされます。

 国内では、2025年に約700万人が認知症になると推計され、MCIの人も同じ規模になるとみられています。金沢大の調査では90歳以上の約9割が、認知症かMCIでした。

 国内外の研究によると、MCIの人は、年5~15%が認知症に進む一方、年16~41%は正常に戻ります。

 九段坂病院(東京都)は昨年6月、MCIの人を対象とした「認知症予防外来」を始めました。脳神経内科医が診察し、認知機能検査や脳の画像検査、血液検査などで状態を確かめます。

 MCIの原因は様々です。ビタミン不足や、甲状腺機能低下、正常圧水頭症などが見つかれば、薬や手術で、根本的な治療を行います。

 予防外来では、禁煙や運動、バランスのとれた食事など生活習慣の見直しも助言します。英医学誌「ランセット」は、高齢者が抱える認知症のリスクのうち、喫煙や運動不足、糖尿病、社会的な孤立などは対策ができるとしています。

 東京都の80歳代女性は、昨秋、予防外来を受診し、MCIの状態と診断されました。幻視が特徴のレビー小体型というタイプでした。もの忘れのほかに、壁のシミが虫に見えたり、窓の外から人がのぞいているように感じたりして、家に閉じこもりがちになっていました。「コーラスや体操教室に出かけ、生活にメリハリを付けるように心がけるなどして、幻視も減りました」と話します。

 症状が軽い段階で医療機関を受診する人はまだ限られます。同病院副院長の山田正仁さん(脳神経内科)は、「認知症に進む手前で見つかれば、症状の改善や、進行の抑制が目指せます。おかしいと思ったら、早めに受診してほしい」と呼びかけます。

研究・薬開発進む

 MCIの人を対象とした研究や薬の開発も進んでいます。アルツハイマー病では、進行を長期に遅らせることを狙う複数の薬が実用化に向けて大詰めを迎えています。

 国立長寿医療研究センター(愛知県)などは、国内4か所の医療機関と「J―MINT」研究を始めています。MCIの約500人を対象に、運動、栄養指導、認知機能トレーニングを続けた効果を確かめます。

 2015年に発表されたフィンランドの研究では、MCIの人に、定期的な運動やバランスの良い食事といった複数の対策を行えば、認知機能の低下を抑えられました。同センター病院副院長の桜井孝さんは「日本でも実証することで、MCIの人が長期的に取り組める根拠のある予防法を確立して、広めていきたい」と話しています。

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