文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

知りたい!

医療・健康・介護のニュース・解説

セイン・カミュさん 自閉症の妹、絵の才能が開花…障害者アート支援「隠れた才能に歩み寄って」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 障害者文化芸術活動推進法の施行や、東京パラリンピックの開催などを経て、障害者の創作活動を取り巻く環境が改善されつつある。タレント活動のかたわら、約8年にわたって支援に尽力しているセイン・カミュさん(51)に、障害者のアートへの取り組みを聞いた。(聞き手 栗原守)

セイン・カミュさんに聞く

障害者のアートへの取り組み…隠れた才能に歩み寄って

障害者のアート活動を支える意義について語るセイン・カミュさん(東京都港区で)=宮崎真撮影

  ――障害者のアートとの関わりは。

 一般社団法人「障がい者自立推進機構」の理事として活動しています。この組織は、障害者の絵画などの作品を企業に活用してもらい、その対価の一部を作家に報酬としてお返しする活動を展開しています。単純に言うと、障害者がアートを通じて夢をかなえるための支援活動です。

 障害のある子がいる親御さんの一番の不安は、「自分がいなくなったら、子どもの面倒を誰が見るのか」ということです。社会の中で生きていくために、少しでも経済的に自立できるような仕組みを作ることが、機構の活動の柱です。

  ――どんな経緯で、支援に携わることになったのですか。

 自閉症と知的障害がある妹が、神奈川県平塚市で絵画の創作をしています。池田ジャスティーン(43)という名前で活動しています。妹の創作活動は、私がこの機構で理事をするきっかけになっています。

 わが家では、妹が中学の頃から母親が絵画を教えていました。これが契機となり、近くの障害のある作家たちが集まる施設で創作活動を始め、次第に妹の才能が開花していったようです。

障害者のアートへの取り組み…隠れた才能に歩み寄って

池田ジャスティーンさんの作品「あひる」=提供写真

障害者のアートへの取り組み…隠れた才能に歩み寄って

セイン・カミュさん(左)とアーティストの妹、池田ジャスティーンさん=提供写真

  ――機構での活動や、その成果は。

 理事会に出席して、意見を述べるほか、イベントの司会を務めたり、芸能界の友人を誘って、活動に参加してもらったりと、主に情報発信に努めています。

 大きな企業が賛同してくれるようになってきています。名刺のデザインや、社屋の内装に作品を取り入れてくれることも多いです。

 もちろんすべての障害者の作家に利益をもたらせているわけではありません。企業側にも好みがあって、作家の作風と合わないと、購入には至らないからです。しかし、絵を世の中に出す仕組みを作ることで、作品の「見せ場」ができつつあると思っています。

  ――やりがいを感じるのはどういう時ですか。

 この事業に意味を見いだして出品してくれる作家が増えていることです。今は700人ぐらいいます。買い手も増えています。

 世界各地の作品に触れる機会もあります。各国の文化や政治情勢が作風に反映されていて、違いがありながらも、人間の心を動かす何かがあります。アートを通じて国境を超えて心がつながる思いです。

  ――障害者の作品の良さはどんなところですか。

 共通しているのは自由な発想ですね。何にもとらわれていないから力強い。発想とか自己表現というものは、きっと人間にはなくてはならない根源的なもので、そのことを気づかせてくれます。

  ――活動を通じて感じた社会の課題は。

 障害のある人に対し、ない人が話しかけることが大事だと思います。「近づきづらい」と考えている人は多いと思います。

 でも、関わってみないと隠されている才能とかは分からない。忙しい毎日でも立ち止まって、歩み寄っていただきたい。個性的で才能豊かな障害者が多いのに、知られずにいるのは残念です。

  セイン・カミュ  1970年、米ニューヨーク州生まれ。タレントとして、機転のきいたトークで人気を博し、TBS系列で放送されたバラエティー番組「さんまのスーパーからくりTV」などで注目を集めた。テレビ番組のナレーションなども定評がある。日本在住で3児の父親。

 セインさんと、障がい者自立推進機構の松永昭弘・代表理事の対談を、読売新聞オンライン(YOL)に掲載しました。障害のある作家の作品も紹介しています。

作品取引 仲介の重要性

 障害者文化芸術活動推進法が2018年に施行され、全国各地に「支援センター」が設置されるなど、障害者の芸術活動の環境を整備する動きが活発化している。ただ、作品を売買する際には、人脈やノウハウに乏しい作家側と、作品の価値を低く見積もりがちな企業側が、手探りで取引することが多い。適正価格での売買が課題だ。

 このため、障害者の作品と企業を結びつける仲介事業者の役割が重要になっている。全国の障害者の作品を登録して企業に原画を販売するだけでなく、製品デザインとして二次利用しやすいよう、作品をデータ化するなどの工夫をしている。

 仲介事業を展開している団体は、一般社団法人「障がい者自立推進機構」(東京)のほか、非営利組織(NPO)が運営する「エイブルアート・カンパニー」(本部・奈良市)、株式会社の「ヘラルボニー」(本社・盛岡市)などが知られている。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

知りたい!の一覧を見る

最新記事