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がん患者団体のリレー活動報告

医療・健康・介護のコラム

特定非営利活動法人クラヴィスアルクス

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特定非営利活動法人クラヴィスアルクス

東京のがん研有明病院で2021年10月29日から1か月間開催された「遺伝性がん当事者からの手紙」写真パネル展。左はクラヴィスアルクス理事長の太宰牧子さん。右は、パネル展に企画段階から携わってくださっているがん研有明病院臨床遺伝医療部・認定遺伝カウンセラーの金子景香さん

 特定の遺伝子に変異があることで一般の方よりもがんを発症する確率が高く、繰り返しがんを発症しやすい特徴を持つ「遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC: Hereditary Breast and Ovarian Cancer)」。遺伝性ゆえ、周囲の偏見を恐れたり、将来の発症におびえたりする患者さんも多くいます。そこで、自身もHBOCである太宰牧子代表が2014年5月、国内初のHBOC当事者会「クラヴィスアルクス」を設立しました。会の名前は、ラテン語から命名したもので、「それぞれの色に合わせた明るい世界、私たちの心の扉を開ける大切な鍵、遺伝医療はこれからの医療の鍵となること」という意味を込めました。会では当事者の相互支援を中心として、HBOCに関する正しい知識と理解を広げる活動をしています。

遺伝性ゆえに将来への不安も

 太宰代表は40歳だった姉を卵巣がんで失い、自らも42歳で左胸に乳がんが見つかりました。姉妹で若くして次々とがんになったことに不安を抱き、遺伝学的検査を受けたところ、BRCA1遺伝子に変異が認められ、HBOCであることがわかりました。

 太宰代表は「HBOCは、がんの中でも『遺伝性』であることから感じてしまう悩みや、診療体制、社会的な問題点がいくつもあります」と指摘します。遺伝性疾患はHBOCに限ったことではありませんが、みんなと同じ乳がんや卵巣がんだと思っていたのに、そこに、どっこいしょと「遺伝性」という冠言葉がのっかります。

 HBOCの場合、診断されても必ずしもお子様や血縁者に同じ遺伝子変異が見られるわけではないのですが、がんを経験した者として、つらい経験をさせてしまうかもしれない申し訳なさに悩んだり、未発症のうちに診断(遺伝学的検査によって)され、一般の方よりも発症リスクが高いことで不安になったりされる方も多くいらっしゃいます。

早めの診断で増える治療の選択肢

 その一方、がんの発症前や発症しても早い段階でHBOCであると知ることにより、治療の選択肢が増え、予防のためのリスク低減手術や、生涯にわたってきめ細やかなサーベイランス(生涯経過観察)をプログラムしてもらえるようになります。

 何よりも、お子様だけではなく血縁者と情報共有することにより、診断を健康管理につなげられる“大きなメリット”と考えられる方が増えつつあることは、HBOCへの理解が進んだ証しだと感じています。

情報共有のための写真パネル展

 人それぞれ、HBOCを理解し、受け入れられるタイミングは異なります。だからこそ当事者同士で支え合い、情報共有することが必須だと考えています。さらに医療者や全国の皆様へ伝えたい思いを形にし、HBOC診療へのわずかながらの還元を願って、「遺伝性がん当事者からの手紙」写真パネル展を企画しました。

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制作されたパネルより(中央西日本支部)

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同(中央西日本支部)

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同(四国支部)

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 同(東海支部)

当事者の思いがつづられ、時に涙も

パネル制作に参加された当事者と互いに手紙を共有し、振り返り、時には涙を流すこともありましたが、完成したパネルは自分の分身のような存在として、全国の誰かの元へ笑顔で送り出します。パネルにレイアウトされた写真は、撮影にも当事者や医学生が力を貸してくださいました。四国支部長の菅野綾さんは「どの撮影も楽しい大切な思い出です」と振り返ります。

 手紙にはつらかった時のメッセージがつづられていても、不思議と写真撮影の時には少しずつ前向きに歩いているご自身の姿や、思い出の品が納められているように感じています。

 2018年の企画当初は数枚だったパネルも、今では20枚を超えました。今後もご協力いただける病院や学校を募り、HBOCの啓発と当事者の思いをお伝えできればと願っております。2022年は北海道、北陸、東海地方でも開催を予定しています。お近くにパネル展の便りが届いたら、ぜひのぞきに来てくださいね。遺伝性がんではない方も、どこかあたたかさを感じていただけると思います。

会発足7年 たくさんの仲間に感謝

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東京のがん研有明病院で開催された「遺伝性がん当事者からの手紙」写真パネル展の様子(2021年) 

 遺伝性乳がん卵巣がんの当事者会を設立して1年もたたない頃、読売新聞に会の発足や、当事者の思いを掲載していただきました。早いものでその時からもう7年になります。孤軍奮闘していた当時を思い出すと、今ではこんなにもたくさんの仲間や医療者に支えられていることに胸が熱くなります。

 また、この企画にご理解とご賛同をいただき、実現へと結びつけてくださった正力厚生会の皆様に心より感謝申し上げます。

 この先も次世代に向け、社会的な課題解決、遺伝に起因した差別や偏見をなくすための法整備、未発症保持者への対策について、パネル展開催と並行し、継続した活動に取り組んでまいります。ご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。

特定非営利活動法人クラヴィスアルクス

 遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)当事者会として2014年より活動を開始。北海道、東北、関東、東海、中央西日本、四国、九州、米国に支部を置く。本部は東京都渋谷区。正会員約100人で、寄付サポート会員、賛助会員の制度がある。がん発症、未発症にかかわらず当事者の相互支援および血縁者への支援を中心に、遺伝性がんの教育、市民公開講座の企画、ピアサポーター養成、患者・市民参画に取り組む。遺伝に起因した差別やゲノム医療における不利益を被ることのないよう、法整備や社会的課題解決を目標とするほか、現在取り残されているリスクが高い未発症保持者に必要な対策の保険収載化を目指している。2022年は北陸地方を手始めに各地でパネル展開催を予定している。

ホームページ  https://www.clavisarcus.com

 このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。

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公益財団法人 正力厚生会

 正力厚生会は1943年(昭和18)に設立され、2009年に公益財団法人となりました。「がん医療フォーラム」の開催など、2006年度からは「がん患者とその家族への支援」に重点を置いた事業を続けています。
 現在は、医療機関への助成と、いずれも公募によるがん患者団体への助成(最大50万円)、読売日本交響楽団弦楽四重奏の病院コンサート(ハートフルコンサート)を、事業の3本柱としています。
 これからも、より質の高いがん患者支援事業を目指していきます。
 〒100-8055 東京都千代田区大手町1-7-1 読売新聞ビル29階
 (電話)03・3216・7122   (ファクス)03・3216・8676
  https://shourikikouseikai.or.jp/

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