Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」
医療・健康・介護のコラム
夢を見るメカニズム――こんな時代だから、睡眠中ぐらいは良い夢をたくさん見たい、ですよね――
こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に、科学的見地からビシバシお答えします。皆様、よい初夢を見ることができたでしょうか。夢にも、鮮明な夢、淡い夢、怖い夢などさまざまあります。なぜ夢には濃淡があるのでしょうか? 実は睡眠段階によって夢の中身も異なるようです。
「夢を見る睡眠」とは…
睡眠は大きくレム睡眠とノンレム睡眠に分けられ、さらにノンレム睡眠は浅いノンレム睡眠と深いノンレム睡眠に分けられます。レム睡眠は「夢を見る睡眠」として知られていますが、「レム睡眠=夢見睡眠」という表現は、必ずしも科学的に正しくありません。確かにレム睡眠中に夢を見ることが多いのですが、ノンレム睡眠中にもしばしば夢を見るからです。
1950年代にレム睡眠が発見されてから間もなく、レム睡眠中に夢を見やすいことが解明されました。当時の実験で、睡眠脳波を測定しながら被験者に眠ってもらい、レム睡眠中に覚醒させると、約50~80%の高い確率で夢を見ていたと回答したのです。精神分析学で有名な心理学者フロイトの「夢分析」が流行していたこともあり、レム睡眠は夢見睡眠として広く知られるようになりました。
レム睡眠中に見る夢は鮮明なものが多く、どこか見知らぬ場所を歩いていたり、仕事をしていたりするなど、ちょっとしたストーリー性があります。時には誰かと口論する、動物に追いかけられる、試験ができずに焦る、など恐怖感や不安感を伴う、いわゆる「悪夢」を見ることもあります。目覚めた後に覚えていて内容を言葉で説明しやすいのが特徴です。
鮮明に思い出せる夢は
ではノンレム睡眠中には夢を見ないかというと、そうではありません。実験では、ノンレム睡眠中にも約20%の確率で夢を見ていたと被験者は答えました。レム睡眠中よりは低いとはいえ、皆さんの想像よりも高いのではないでしょうか。ただし、ノンレム睡眠中に見る夢はちょっとしたイメージや話し声を感じる、ぼんやりと景色が見えるなど、断片的で淡い夢が多いようです。そのため、目覚めた後に何か夢を見たような気がするが思い出せないことがしばしばです。
このように、レム睡眠中に比較して低いとはいえ、ノンレム睡眠中にもかなりの確率で夢を見ることが分かっています。それでも朝に目覚めた時に「いい夢だった。もう少し見ていたかったなぁ」「怖い夢だった……夢で良かった」など、私たちが鮮明に覚えている夢は、主に明け方に出現するレム睡眠中に見た夢です。その観点からは「レム睡眠=夢見睡眠」という表現も全くの間違いではありません。
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