いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ
医療・健康・介護のコラム
「あなたは子どもがいるけど、私は一人もいないのよ!」体外受精をいやがる離婚歴のある夫にどなってしまった
通信会社に勤める女性Kさん(37)は、3年前に結婚しました。夫との出会いは、趣味のテニスサークルでペアを組んだのがきっかけだったそうです。夫はとてもテニスが上手で、Kさんにいろいろと手ほどきをしてくれました。Kさんだけではなく、後輩たちの面倒見もよく、優しくて頼りになる夫に、Kさんは次第にひかれていきました。そして半年ほどの交際の後、どちらかというとKさんから積極的にアプローチをして結婚に至ったといいます。
「SNSの情報などで、子どもを産むなら35歳までにしないと不妊になりやすいって見ていたので、私のほうが少し急いでいたこともあったと思います。夫は8歳年上で、離婚歴もあったので、両親は最初少し不安も抱いたようなのですが、私はそんなことは全く気にならず、やや押し切った形で結婚しました」
消極的な夫を説得し、妊活を開始
結婚後、Kさんはできるだけ早く妊娠したいと思っていて、すぐに妊活を始めようとしたのですが、夫はあまり積極的ではなく、「しばらくは新婚生活を楽しみたいし、2人で生活する時間を大事にしたいから」と、避妊を続けようと言ったそうです。しかし、半年たってもまだその状態が続いたことから、Kさんは「早く子どもをつくりたいから」と、避妊をやめるように夫に話をし、そこからようやく妊活生活が始まりました。
Kさんは毎日、基礎体温を測り、排卵検査薬で毎月の排卵日を予測しては、「今日は排卵日だから、早く帰ってきてね」と、夫にその日の朝、伝えます。しかし、そういう日に限って夫は残業になったり、付き合いで遅くなったりするなどで、なかなかタイミングが取れませんでした。排卵日の翌日や翌々日に夫婦生活を持っても、一向に妊娠に結びつきません。
Kさんは次第に排卵日近くになると、イライラを隠せなくなってきました。ついに「どうして排卵日にちゃんとタイミングを取ろうと努力してくれないの? 私は毎日、基礎体温も測って、排卵日を特定して一生懸命やっているのに!」と夫を責め立てました。夫は驚いたようなそぶりを見せましたが、ただ黙ってKさんの言うことを聞いていたといいます。
Kさんが焦っていたのには理由がありました。実はKさんの夫には、前妻との間に子どもがひとりいたのです。「夫は20代という若いときに結婚したのですが、3年も続かなかったそうです」。離婚の際に子どもは前妻に引き取られていき、その後、前妻は再婚したため、それ以来、子どもには会っていないといいます。
協力的ではない夫に不信感
「(子どもに)会いたくないの?と聞いたことがあるのですが、子どもは小さかったので、今のお父さんを実のお父さんだと思っているらしく、前妻が会わないようにと言ってきているし、自分自身も、会うと混乱させたり、傷つけたりしてしまうのじゃないかと思っているようです」とKさんは語ります。「でも、その話をしたときに、すごく寂しそうに見えて、やっぱり子どもが好きなんだなって。だったら私たちの子どもを早く作らなきゃって思っているのに、ちっとも協力的ではない夫に不信感まで抱くようになり、いら立ちを隠せない自分も嫌になって」と、Kさんは声が小さくなります。
その後、Kさんの強い希望もあり、2人はKさんの会社の近くの不妊治療も行っている産婦人科に通うことにしました。「会社が近いから通いやすいかと思って選んだんですけど、誰かに会ってしまうのじゃないかと最初はちょっとびくびくしながら通っていました。別に悪いことをしているわけじゃないですけど、周りの誰にも病院に行くことを言っていなかったので……」
まずは夫婦ともに検査をすることになり、夫は精液検査をしたけれど問題なし。Kさんも一通りの検査を行い、子宮卵管造影検査も行ったのですが、ちょっと卵管が細いようだと言われたぐらいで、特に問題になる要因は見つかりませんでした。「その卵管造影が本当に痛くて痛くて、涙が出てきました。途中でつまりかけているところがあったから、という説明を受けたんですが、もう二度と受けたくないって思いましたね」。そして、卵管造影検査の後は妊娠しやすいと言われ、その周期はタイミングをとってみたものの、やはり妊娠には至りませんでした。
「まだ奥さんの年齢も若いし、お二人とも原因がこれと言って見当たらないので、まずは排卵日を特定してのタイミング法を行っていきましょう」と医師に言われ、半年ほどタイミング法を続けたのですが、一向に妊娠の兆候がありません。やがて医師から「そろそろ、人工授精をしてみますか?」と提案を受けました。
Kさんは一も二もなく「やります」と言い、あまり乗り気ではなさそうだった夫を説き伏せて、次の月から人工授精をすることになったそうです。
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