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幼少期に感染するピロリ菌 放置すれば胃がん進行も…20歳頃までに検査を

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 胃に感染し、胃炎を起こす「ヘリコバクター・ピロリ菌」は、胃がんをはじめ多くの病気に関係しています。今では衛生環境が整って感染の機会が減っていますが、若いうちに一度は検査を受け、感染がわかれば早期に除菌することが重要です。(東礼奈)

若いうちに検査を

 ピロリ菌は、胃の防御(バリア)機能ができていない5~6歳頃までの幼少期に、口から入って感染します。保菌者として多いのは、子どもの頃に水道が普及していなかった、現在、60~70歳代以上の人たちです。

 今の日本では、汚染した水などから感染することはほぼありません。菌を持つ親から口移しで食べ物を与えられたり、保育所などで子ども同士が接したりする中で、唾液を介して感染すると考えられます。

 胃の中は、食べ物を消化する胃酸が分泌されています。ピロリ菌は、ウレアーゼという酵素でアルカリ性のアンモニアを作ることで、胃酸を中和して生き残ります。感染すると、ほぼ全員が数か月以内に、菌が出す毒素や自己免疫の働きで胃の粘膜が荒れる慢性胃炎の状態となります。

 放置すると、多くの人は胃の粘膜が 萎縮いしゅく し薄くなる「萎縮性胃炎」に、さらに一部は胃がんに進行します。こうした病気を発症するのは40歳を過ぎてからです。

 慢性胃炎や萎縮性胃炎になっても胃痛などの自覚症状はほとんどありません。症状の有無にかかわらず、胃炎が進行する前の20歳頃までに、遅くとも40歳頃までに一度はピロリ菌の検査を受けることを勧めます。

 検査には、内視鏡を使わない「尿素呼気試験」「便中抗原検査」「抗体測定」と、内視鏡を使う「培養法」「迅速ウレアーゼ試験」「鏡検法」があります。

 主流の検査法は、尿素呼気試験です。特殊な炭素を含む尿素の錠剤を飲み、前後の呼気を採取して調べます。菌が出す特殊な炭素が呼気に含まれていれば陽性と判定されます。

 内視鏡を使う検査は、胃の状態をカメラで見ると同時に組織を採取して調べます。胃炎が進行すると粘膜が荒れて腫れたり、血管が透けて見えたりするようになります。

治療は薬で除菌

 治療は、3種類の薬を1日2回、7日間飲み、ピロリ菌を除菌します。最初は、アモキシシリンとクラリスロマイシンという抗菌薬と、胃酸を抑えるプロトンポンプ阻害薬を使います。除菌の成功率は7~9割です。

 治療の4週間後以降に検査し、除菌できていなければ、クラリスロマイシンをメトロニダゾールに替え、再度1日2回、7日間飲みます。これで、ほとんどの人は除菌できます。

 治療で下痢や口内炎などの副作用が出ることもありますが、多くは数日でおさまります。発疹などの強いアレルギー反応が出た場合は中断し、薬を替えるなど別の方法を検討します。

 ピロリ菌の除菌治療は胃がん対策に有効で、2013年に慢性胃炎の患者も2回まで公的医療保険の対象となりました。兵庫医科大教授(消化器内科学)の三輪洋人さんは「除菌すれば、胃の病気になる可能性はかなり減ります。労を惜しまずに少しだけ受診に時間を割いてみてください」と話しています。

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