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医療・健康・介護のコラム

『おかあちゃん、こんな僕やけど、産んでくれてありがとう』 青木聖久著

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『おかあちゃん、こんな僕やけど、産んでくれてありがとう』 青木聖久著

 帯の一文にドキッとさせられる。

 「自分の子どもだから、殺されてもいいじゃないか」

 本書には精神障害がある人とともに生きる15の家族の歴史がつづられている。どれもが平たんな道のりではない。障害と出会い、格闘し、自らを省みて、そして受容に至る過程は、それぞれが筆舌に尽くしがたいものだろう。

 冒頭に挙げた帯の一文は、精神疾患を発症した次男が母親に暴力を振るうようになった時、仕事に励んでばかりの父親が投げかけた言葉だ。それに対して、母親は「自分の子どもを、犯罪者にしてしまうのよ」と激怒する。どの家族も、そんな混乱と手探りの時期を経て、家族の新たな幸せの形を見いだしていく。

 障害のある家族の影響を強く受けるのは親ばかりではない。中学生の時に4歳上の兄が暴れ、「もうこの家にはいられない」と思った男性は、避けられない用事で久しぶりに実家を訪ねた時、兄から「俺と一緒にいてはずかしくないか」と言われて頭の中が真っ白になった。兄の苦しみを初めて知り、自らの思いも初めて伝えることができたという。

 著者は、ソーシャルワーカーとして病院や福祉施設で長く勤務した経験があり、現在は日本福祉大学教授。読者の理解を助けるための用語解説も収録している。

 (ペンコム 1650円)

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