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緑内障で視野が欠けているが、白内障が進んで見えづらい……白内障の手術を受けても大丈夫か?

 強度の近視で緑内障です。左目は3分の1視野が欠損しています。点眼薬を使っていて眼圧は安定しています。年々、白内障が進み、大変見づらく、生活にも影響が出ています。かかりつけの眼科医から白内障の手術を勧められていますが、白内障の手術をすると緑内障が進むかもしれないと言われ、手術を迷っています。どうすれば良いでしょうか。(女性、70歳代)

白内障手術が緑内障に良い影響を与える可能性も

若倉雅登 井上眼科病院名誉院長

 緑内障にはタイプがありますが、有病率が圧倒的に多い「原発開放隅角(ぐうかく)緑内障」として話を進めます。この場合の緑内障とは、網膜の神経線維にダメージを与える病気で、ゆっくり進行して視野を狭め、視野の狭まりが中心部に及べば視力も低下するという性質の病気です。その行方を左右する因子は、眼圧を第一として種々の要素がありますが、治療としては眼圧を下げることが最もエビデンスの高い対処法です。これで進行スピードを下げるのが目標です。相談者もこの治療を受けているのだと思います。

 一方の白内障は、年齢と共に進む病気で、見えづらくなってきたら、目の濁った水晶体を取り出して、人工のレンズに入れ替える手術が行われます。この手術が緑内障を進行させるかというご心配ですが、一般に白内障手術を受けると、その目の眼圧は1~2mmHg程度下がるというデータが多く、白内障手術は緑内障にむしろ、よい影響を与える可能性が高いです。

手術中や直後に眼圧が変動して緑内障に影響する場合もある

 しかし、主治医の方の意見にも理由があります。手術中や術後に眼圧が変動し、特に一時的に眼圧が上昇した時に、その圧力によって、また眼内の循環の変化によって神経線維のダメージが進行する場合があるからです。ただ、これは一時的な現象で、大半のケースは影響を受けないのですが、すでに神経線維のダメージが広範囲に及んでいて、中心部の視野にかなりの影響が出ている場合や、眼圧が上昇している時間が長くなるとその限りではありません。

 実際、私自身も以前、中心視野がわずかに残存していた緑内障患者に対して合併症がなく行われた白内障手術後、残存視野が想定以上に縮小したケースを経験しました。ただし、その手術は今日の進歩した手術法とは異なる前時代の方式でした。現在は、このような例は非常にまれだと思います。

強度近視が視野に影響する場合も

 最終的には患者さんご自身の臨床上のデータや、見えづらさによる生活への影響の程度を考えて、ご本人と医師が相談して決めることになります。相談者は強度近視で視野が3分の2とのことです。中心視野の様子が大事なのですが、ご質問の内容からは不明です。また、強度近視では視野が欠けている原因すべてが眼圧によるとは限りません。眼球が次第に拡大する性質があり、神経線維層の引き延ばしや視神経乳頭の変形といった強度近視特有の構造変化が原因のこともあります。

医師によって考え方に違い…セカンドオピニオンを受けては

 さらに、緑内障は両目ともに存在するのが原則ですから、反対の右目の状況も知りたいところです。これは、両目でものを見る機能(距離感や立体感を把握するのに大事な機能)を知る上でも重要です。眼科も領域ごとの専門化は非常に進んでいます。緑内障と白内障、両方の病気を合併する複雑なケースの場合、それぞれの専門分野間でいくらか考え方が違うことがあります。また、視野の分析や両目で見る機能を重視する筆者のような神経眼科の立場での検討が大事な場合もあります。

 最終的にはご自分で決断することになりますが、セカンド、サードオピニオンとして何人かの専門家の意見を聞くことはよいことです。そのためには、視野など過去のデータのコピーを主治医からもらっておけば、より正確な意見が聞けるでしょう。

若倉雅登(わかくら まさと)

 井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長。1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花(つばな)流しの診療所」「蓮花谷話譚(れんげだにわたん)」(以上、青志社)などの小説もある。

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