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森永康平「患者と医師のコミュ力を育てる」

 自分の症状を医師にうまく伝えられない、医師の言っていることがわからない……といった経験はありませんか? 意思の疎通がうまくできないことで、深刻な結果を招くことだってあり得ます。患者と医師が良好なコミュニケーションを保つには、どんなことを意識すればいいのか。医師教育を研究する、とちの葉クリニック(宇都宮市)院長の森永康平さんがアドバイスします。

医療・健康・介護のコラム

「突然、のどが渇いて」に潜んでいた深刻な病…患者が訴えたいことと医師が知りたいことの違い

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 はじめまして。宇都宮のクリニックで内科医を務めている森永と申します。最近は、アートを活用した医療者の教育にも取り組んでいます。今回から医療現場でのコミュニケーションをテーマに、ヨミドクターのコラムを執筆させていただくことになりました。

医師にとって「会ったその瞬間」からが勝負

「突然、のどが渇いて」に潜んでいた深刻な病…患者が訴えたいことと医師が知りたいことの違い

 私はこれまで、地域医療を担う病院や大学病院、クリニックなどの医療現場で働いてきました。「総合診療」という診療科にご縁があったため、非常に幅広い年齢の方の様々な病気を診療させていただく機会に恵まれました。紹介状をいただくなど、患者さんに関する事前の情報が得られることもありますが、どちらかというと病名・診断名も付いていないのが初期設定で、会ったその瞬間からが勝負……というのが現実です。時間的な制約があるのも当たり前の中で、見て、聞いて、診察をし、「あの病気かな」「これは急いだほうがいいかな」なんてことを、頭の中で汗をかきながら(顔には出さずに!)、目まぐるしく考えているんです。

 そんなこともあり、私の診療にとって「患者さん方とのコミュニケーション」は欠かせません。ないと困る、というか、なければ診察が成立しない大事なものです。 齟齬(そご) が生じて患者さんに不信感をもたれてしまうと、引き出せたはずの情報が手に入れられない、なんてのはざらなのです。

 診療の中で失敗も重ね、でも諦めずにコミュニケーションを考え続けてきたことで、私にもほんの少しですが、 矜持(きょうじ) というもの(というか、こだわり?)も生まれてきました。この連載は、生の医療現場で得た経験から、少しでも社会に還元できるものがないか、良好なコミュニケーションの醸成につながらないかという、そびえ立つ壮大な課題への挑戦と捉えていただければ幸いです。

患者さんは話したいことがたくさん でも医師が知りたいことは…

 皆さんお気づきかもしれませんが、はっきり言って、今の医療現場でのコミュニケーションには課題が山積みです。でも、そこに悪意が存在するわけではなく、悲しいすれ違いの結果、生じている問題なのだと自分は思っています。

 患者さんは「つらい症状をなんとかしてほしい」、医師は「患者さんに良くなってほしい、病で悩まないようにお手伝いしたい」という目的を持ち、それは重なり合っているはずです。どうしてすれ違いが起こってしまうのでしょうか。

 例えば皆さんは、「頭が痛い」という理由で病院やクリニックを受診する時、どんな情報を強調するでしょうか。「痛みの場所」「痛みの性質(キリキリとかドクドクとか)」「3日前に古くなった (さかな) を食べたことなど痛みの原因だと思っているエピソード」「インターネットで調べた病名」「親戚がつい先日、腹痛で入院してそのまま亡くなってしまったこと」などなど。患者さんにとって、話したいことがすごくたくさんあるのは、診察する側の私も肌で感じています。でも、実はそこに「医師が知りたいこと」が含まれていることはすごく少ないのです。

 そもそも、「あなたと私は初対面」であることがほとんどなので、普段の様子を医師は全く知りません。80歳を超えていても病気知らず、毎日畑で精を出している筋骨隆々な方もいれば、若くても難病を患っていて頻繁に症状に悩まされている人もいます。その年代の平均で語ることはできないのです。

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森永 康平(もりなが・こうへい)

 2011年、筑波大学医学専門学群医学類卒。組合立諏訪中央病院を経て、16年、獨協医科大学総合診療科助教。22年からは、「MED AGREE CLINIC うつのみや」(宇都宮市)の院長を務める。「医学教育を観察と対話から」を合言葉に、アート作品を活用した教育事業「 ミルキク 」を起業。

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