がんのサポーティブケア
医療・健康・介護のコラム
腫瘍循環器学って何? がんと心臓病の気になる関係
向井幹夫・大阪国際がんセンター成人病ドック科主任部長に聞く
がん患者の闘病を支えるがんの支持医療について、専門家に聞く「がんのサポーティブケア」。第13回は「腫瘍循環器学」がテーマです。がんと循環器疾患はどんな関係にあるのか。両者にまたがる新しい学際的な分野の診療について、日本の腫瘍循環器外来の先駆けである大阪国際がんセンター成人病ドック科主任部長の向井幹夫さんに聞きました。(聞き手・田村良彦)
高齢化や新しいタイプのがん治療薬の登場を背景に
――腫瘍循環器学とは、耳慣れない名前です。そもそもどんな医療なのですか。
日本人の死因で最も多いのががんで、2番目が循環器疾患です。両方を足すと死因の約半分を占めます。がん患者さんに循環器に関する診療を必要とする方が増えたことに伴って、がんと循環器の学際領域を診療・研究するために生まれたのが腫瘍循環器学です。
――対象となる患者が増えた背景は何ですか。
高齢化などによって、がんや循環器疾患を患う患者さんそのものが増え、両方を合併する患者さんが増加しています。さらに、新しいタイプの抗がん剤やがん治療の登場に伴い、従来にはなかった心臓・血管における合併症の問題も生じています。また、がん患者さんの生命予後が改善したことで、心臓・血管における晩期障害をケアする必要も増えました。
互いに関わりが少なかった がん治療医と循環器医
――腫瘍循環器学はいつ頃生まれたのですか。
世界で初めて米国のMDアンダーソンがんセンターに腫瘍循環器外来ができたのが2000年です。日本では10年余り遅れて、2011年に大阪国際がんセンター(当時は大阪府立成人病センター)で始まりました。
――それまでは、両方の疾患を持つ患者を診る体制はなかったのでしょうか。
それまでの医療現場では、がん専門医と循環器専門医がお互いに関わることは少なかったのが現実でした。これは、日本に限った話ではなく、米国をはじめ世界的にもそうです。
ところが改めて考えてみると、喫煙、飲酒をはじめ、がんと循環器疾患の危険因子にはもともと共通点が多いのです。後で述べますが、それどころか、がんと循環器には発症の仕組みそのものにも共通点があることが、近年の研究で明らかになってきました。腫瘍循環器学が世界的に注目されている理由です。
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