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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

過度のマッサージも原因に!? 立ち上がると起きる頭痛や吐き気は「脳脊髄液減少症」かも

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 「脳脊髄液減少症」という病気、それによる頭痛をご存じだろうか? 一時期、マスコミ各社が交通事故と関連する頭痛としてこぞって取り上げていたので、耳にしたことがある方もいるだろう。しかし、あたかも交通外傷による「むちうち症」(「外傷性 (けい) 部症候群」)の多くがこの頭痛を引き起こしているかのように報道されたこともあって、混乱をもたらした。

布団から起き上がれず

過度のマッサージも原因に!? 立ち上がると起きる頭痛や吐き気は「脳脊髄液減少症」かも

 脳脊髄液とは、脳室で作られ、くも膜(脳の表面から脊髄を包んでいる)の下を循環している液体のことである。硬い骨に囲まれている脳や脊髄は、脳脊髄液のなかに浮かんでおり、外力が加わってもこの液体がクッションの役目を果して、物理的な障害を受けにくいようにしているのだ。豆腐を水に浮かべている状態を想像していただくとよい。

 脳脊髄液減少症は、脳脊髄液が何らかの原因によって漏れ出て(髄液漏と呼ぶ)、多くの場合、頭のなかの髄液圧が低下することにより、脳室が変形、脳の表面が引っ張られることで起きると考えられている。脳脊髄液圧が低下すると、頭痛や吐き気、首の痛みやこわばり、光過敏、耳鳴りなどを起こす。寝ている時にはさほどではないが、座ったり立ち上がったりすることで悪化する頭痛(起立性頭痛)が特徴だ。そして、頭痛のために布団から起き上がれなくなる。さらには、集中力の低下、眼球の運動障害、聴力の低下(低音域の難聴)、意識障害などを起こすことだってある。

 ペインクリニック領域では、以前から、腰椎麻酔(虫垂炎の手術の際などに行われている)や髄液検査、さらには硬膜外麻酔といった処置を行った後にみられる頭痛として一般的であった。髄液漏があるものの髄液圧は正常のケースもあり、脳脊髄液を産生する能力の低下や血液凝固異常、胃腸障害、自律神経系の異常、ストレスなどが関与していると考えられている。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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