なかさとみ「吉本芸人 卵子提供で2人のママに」
医療・健康・介護のコラム
娘に精子提供を告知 普段の会話でも自然と話題に
小さい頃から出自を知れば、自分を「かわいそう」とは思わない
小さい頃から告知を受けているお子さんの場合、ある程度大きくなると、日常会話のなかでドナーのことを口にする子もいます。このようなことは日常の一幕という当事者家族もいますので、そんな子供たちの気持ちを素直に尊重してお読みいただけるとありがたいです。
小さい頃から自分の出自を知っている子供の場合、自分で自分のことをかわいそうだと思っている子供はほとんどいません。こちらについては、大人たちの一方的なイメージが非常に強いことを感じます。その夫婦が決めた精子、卵子提供が正解だったかそうでないかは、「生まれてきた子供たち」にしか決めることはできません。
告知する日が待ち遠しかった私
私は卵子提供を決めた時に、告知することも決めていました。残念ながら私は50歳になった今も複雑性PTSDのトラウマと闘っています。血のつながった親から適切な親子関係を構築してもらえなかったことでずいぶん長い間、苦しんできました。
卵子提供を決めた時にアイデンティティークライシスになった方々の手記を読んだのですが、クライシスになった方の心の苦しみを知り、どうしても自分と重ね合わせずにはいられませんでした。
「告知は絶対にしよう!」と、これから生まれてくるであろう子供のために告知することを前提にドナーを選びました。子供たちが理解できる年齢になるまでは毎年、お誕生日に告知をしています。2歳の誕生日から告知を始めました。「あなたが生まれてきたすてきな日、みんなから愛されて生まれてきたんだよ」。そのことを早く子供たちに伝えたくて、むしろ私は、告知する日が待ち遠しかったくらいです。
告知する日は子供たちの誕生日でもありますので、毎年思い出に残るような素敵な一日にしよう!と夫と張り切って準備をしています。私たち夫婦の親も親戚も、子供たちが卵子提供で生まれたことを知っています。ありがたいことに、みんなからとてもかわいがられています。自分の生育環境からも、子育ては決して血のつながりだけではなく「どうやって育てるか?」、こちらの方がよっぽど大切だと感じながら子供を育てています。
誤解されている当事者の人物像
卵子、精子提供は、一部の当事者のイメージがいまだに根強く拡散されていると感じます。卵子提供と言うと、どんな手を使っても子供を得ようとする強欲な高齢女性と勝手にイメージされ、ドナーについてはビジネスとして搾取されている若い女性とされているものがまだ根強く残っている印象があります。
たくさんのご相談を受けて感じるのは、当たり前ですが「いろんな人」がいるということです。最初から意識の高いご夫婦もいれば、そうでないご夫婦もいます。早発閉経などの20代や30代の若いご夫婦も含めますと、全体の半数以上のご夫婦は普通に暮らしている方たちです。「卵子提供で子供を持つとは、こういうことなんですよ」と時間をかけて詳しくお話しすると、ほとんどのご夫婦が理解を示してくださいます。
ですから表に出ている一部の当事者だけで、全体を決めつけるのは違うと思うのです。この「決めつけられたイメージ」を変えていくには、表に出てこない一生懸命に生きている当事者が声を上げていくことだと私は思います。10年後、20年後には卵子提供で生まれた子供たちが自分たちのことを伝えるために自ら、声を上げ始めるのではないかと思っています。
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