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武井明「思春期外来の窓から」

医療・健康・介護のコラム

「死んでやる」と叫ぶ母から包丁取り上げ…ヤングケアラーの女子中学生「つらいとは思わない」

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寮のある高校に進学 母親はグループホームに

 お母さんのケアで大変な状況を知った主治医は、お母さんの主治医に連絡を取って訪問看護やヘルパー派遣を導入してもらい、できる限り、美穂さんの負担を減らすことにしました。

 また、美穂さんの同意を得て、家の状況を学校の先生にも伝えました。登校した時にいつも声をかけてもらいながら、困った時には相談できるような関係を作ってもらうようにお願いしました。

 中学校を卒業後、美穂さんは寮のある高校に進学しました。お母さんはグループホームに入所して治療を続けることになりました。高校入学後の美穂さんは、演劇部に入って熱心に練習に励み、充実した高校生活を送っています。

周りの大人が気づいてあげることから

 家族の介護やケアのために、学校に行けなかったり、友だちとも遊べなかったりする子どもたちが相当数いることが、近年、明らかになってきました。本来であれば、家族からさまざまな世話やケアを受ける立場の子どもたちが、反対に家族の世話やケアを自分がしなくてはいけない過酷な状況に置かれています。

 ヤングケアラーといわれる子どもたちは、「自分さえがまんすれば何とかなる」と思っています。美穂さんのように、そうすることが当然と思っており、つらいとは感じずに生きている人も少なくないのかもしれません。そして、家庭内のことは誰にも話せず、自分一人で抱えているのです。しかし、思春期に至って、そのような無理をした生き方が破綻し、美穂さんのように症状が表れることもあるのです。

 子どもたちから助けを求めることはなかなかできないので、ヤングケアラーの問題解決は、周りの大人が気づいてあげることから始まります。そして、彼らの大変さに寄り添い、彼らと一緒に悩み、考えてくれる大人が身近にいることが何よりも必要になるわけです。そうなって初めて、子どもたちが家族のケアの負担から解放され、今度は自分自身がケアされる立場に代われるはずです。(武井明 精神科医)

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武井 明(たけい・あきら)

 1960年、北海道倶知安町生まれ。旭川医科大学大学院修了。精神科医。市立旭川病院精神神経科診療部長。思春期外来を長年にわたって担当。2009年、日本箱庭療法学会河合隼雄賞受賞。著書に「子どもたちのビミョーな本音」「ビミョーな子どもたち 精神科思春期外来」(いずれも日本評論社)など。

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