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階段で転倒・犬にかまれる・相談相手から暴力…民生委員、活動中のけが7年で3200件超

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 一人暮らしの高齢者らの自宅を訪問したり、相談に応じたりしてボランティアで支援する民生委員の活動中の負傷事故が、2020年度までの7年間に全国で3200件以上発生していることが分かった。全国の民生委員のうち65歳以上の割合が約7割に上る中、移動中の転倒や転落、交通事故が目立っており、負担や危険性の解消が急務となっている。(勢島康士朗、沢井友宏)

階段で転倒・犬にかまれる・相談相手から暴力…民生委員、活動中のけが7年で3200件超

 事故件数は、民生委員の活動中の死亡・けがなどを補償する活動保険が適用された事案。東日本大震災で避難誘導などにあたった民生委員56人が亡くなったことを受け、全国民生委員児童委員連合会(全民児連)が14年度に保険を創設した。

 14~20年度の事故は計3287件に上る。転倒してブロックに頭を打ちつけるなどの死亡事故も6件あり、負傷の内訳は骨折1320件、打撲863件、捻挫407件、創傷222件、犬にかまれたケース137件――など。

 年別では17年度の535件が最も多く、15年度の525件が続いた。最も少なかったのは20年度の287件で、新型コロナ禍で活動の機会が激減したことが影響したとみられる。

 長崎県では17年5月、77歳女性が階段で転倒して打撲を負い、18年4月には、73歳男性が移動中に下り坂で足を滑らせ、顔から転倒するなどして負傷した。長野市の住宅では20年8月、70歳代男性が訪問先の女性からクロスボウで右腕を撃たれ、重傷を負った。

 自然災害時の対応も課題となっている。21年8月には、記録的な大雨に見舞われた長崎県西海市で、民生委員の女性(当時70歳)が高齢女性(当時73歳)から「怖いから来てほしい」と助けを求められ、自宅に向かった。その後、2人は近くの用水路付近で倒れているのが見つかり、死亡が確認された。

 同県諫早市の男性(72)は民生委員歴10年以上。約110世帯が暮らす山間部のエリアを担当し、一人暮らしの80~90歳代6人の自宅に月2、3回ずつ足を運ぶ。「鍵をなくした」「家の外に誰かいそうで怖い」など困りごとを聞けば、車で30分かけて駆けつけることもある。

 相談に乗っていた相手から暴力を振るわれそうになったり、大雨で土砂崩れの恐れのある道を通って高齢者を迎えに行ったりと、身の危険を感じた経験も。それでも、「過疎化や高齢化が進む今だからこそ、住民に身近で、行政とのつなぎ役になる民生委員が必要」と強調する。

  ◆民生委員 =民生委員法に基づき、厚生労働相が委嘱する非常勤の地方公務員(特別職)。児童福祉法が定める児童委員も兼ねる。活動費は支給されるが、報酬はない。任期は3年。

高齢化が主な要因

 民生委員の負傷が相次いでいる主な要因が高齢化だ。全国の民生委員の平均年齢は66・1歳(2016年時点)で、四半世紀前から5歳以上高くなっている。定年後も会社などで働く人が増え、なり手不足が深刻化している。世帯数や地域の実情で決められる定数は全国で計約23万9000人に上るが、1万人余りが欠員となっている。

 こうした中、民生委員の負担軽減を図る取り組みも始まっている。宮崎市では2020年、見守り活動の対象世帯にアンケート調査を実施。日常の困りごとで最も多かったのが電球の交換で、関係者で協議したところ、地元の電気工事業協同組合がボランティアで引き受けてくれることになった。全民児連副会長を務める長田一郎・宮崎県民生委員児童委員協議会会長(75)は「作業時に高齢の民生委員がけがをする恐れもあり、防止にもつながる」と話す。

 民生委員の活動に詳しい永田祐・同志社大教授(地域福祉論)は「住民が抱える課題にいち早く気づける民生委員の存在は地域福祉の要。行政や専門職がサポートし、社会全体で支える体制をつくることが地域を守ることにつながる」と指摘している。

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