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知的障害者や認知症高齢者の財産と暮らしを守る…社協やNPOの「法人後見」とは?

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 知的障害者や認知症の高齢者らの財産と暮らしを守る成年後見制度。家庭裁判所が選ぶ後見人には、親族や弁護士などの専門職だけではなく、NPO法人や社会福祉法人などの法人もなることができる。法人が後見人を務める「法人後見」は、複数の専門職のチームによる長期的な支援が特徴で、普及に向けた取り組みも始まっている。(野口博文)

チームで継続支援 強み

社協やNPO 財産管理…知的障害者や認知症高齢者の法人後見

担当者の支援活動の内容やお金の使い道などを確認し合うNPO法人「つなぐ」のメンバー(横浜市鶴見区で)

 横浜市鶴見区の今村 聰子としこ さん(82)は2006年、夫が72歳で亡くなったのを機に、重い知的障害がある長男(56)のため、後見制度の利用を申し立て、長男の後見人になった。

 グループホームで暮らす長男の障害年金などの財産管理を担ってきたが、自身の記憶力の衰えが心配になり、21年6月に後見人を辞任した。代わりに後見人になってもらったのは、区内のNPO法人「つなぐ」だ。

 つなぐは、障害者の後見人を引き受けるため、19年4月に設立された。社会福祉士や看護師、弁護士ら計31人で構成し、現在、12人で21人の支援に当たる。

 それぞれに実務担当者を置き、毎月1回は本人に会う。定期的に複数のメンバーで検討会を開き、担当者の活動内容や本人の健康状態、暮らしぶりなどの情報を共有し、お金の使い方をチェックする。知的障害者の後見期間は長いため、情報の蓄積などで継続的に支えられるのが利点だ。

 つなぐの根岸満恵副理事長は「チームでアイデアを出し合うことで個人の資質以上の支援ができる」と話す。今村さんも「複数の人が息子を支えてくれるので、個人の後見人に託すよりも安心だ」と語る。

担い手に偏り

社協やNPO 財産管理…知的障害者や認知症高齢者の法人後見

 ただ、法人後見の普及は進んでいない。最高裁の統計では、20年に親族以外で法人が後見人に選任されたのは全体の1割ほどだ。

 担い手も偏りがみられる。厚生労働省の調査(18年4月時点)によると、後見を担う法人は500あり、このうち社会福祉協議会(社協)は365だ。NPO法人は78、社協以外の社会福祉法人は7のみだった。

 日本社会事業大学の曽根直樹准教授(障害福祉)は「高齢者や障害者の支援の経験が豊富で、地域の福祉サービスをよく知る専門職員がそろった社会福祉法人が、もっと法人後見を実践してほしい」と語る。

 静岡県富士市で特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人「美芳会」は、09年10月に法人後見を開始した。社会福祉士3人が定期的な訪問などで支援に当たり、事務職員4人が通帳を管理し、出金手続きをするなど分業して、現在3人の後見人などを務める。

 知的障害と軽度の認知症がある60歳代後半の男性の支援では、社会福祉士が2週間に1回、2万円を手渡しに自宅に出向く。現金が手元にあると通信販売や買い物にすべて消費してしまうからだ。

 男性から電話がかかるたびに交代で自宅を訪ね、何に困っているのか耳を傾ける。社会福祉士の増子玲子さん(53)は「地域の福祉関係者と連携し、支援が難しい人を組織的に支えられるのが強みだ」と語る。

バンクに登録

 厚労省が21年12月に公表した成年後見制度の見直し案は、社協以外の法人後見の担い手の育成を掲げ、都道府県による研修実施などを盛り込んだ。

 大阪府では、府内の社会福祉法人を後見人候補として登録する「法人後見人バンク」を創設し、21年12月に6法人を登録した。府が行う「法人後見専門職員」の養成研修を受けた社会福祉士らが所属する法人だ。

 身寄りのない知的障害者らについて、市町村長が成年後見制度の利用を申し立てる際、専門職らの協議で法人後見が適していると判断した場合、バンクから後見人候補者を推薦する仕組みだ。報酬はなく、人件費や事務費用は後見人に選任された法人が負担する。

 府地域福祉課の辰巳貞江さんは「どこに住んでいても、必要な人が制度を利用できるように登録法人を増やしたい」と話している。

◆成年後見制度= 認知症で判断能力が低下した人や、知的障害者に代わって、家庭裁判所が選んだ後見人らが預貯金の管理や福祉サービスの利用契約などを行う制度。本人や家族らが申し立て、家裁が本人の判断能力に応じて後見人、保佐人、補助人のいずれかを選任する。

後見人候補「団体・法人」39% 「きょうだい」53%

 知的障害者の親でつくる「全国手をつなぐ育成会連合会」(東京)が21年2~4月に行った会員アンケートによると、成年後見制度を利用する場合、誰を後見人候補者にしたいかを複数回答で尋ねると、1218人のうち、最多の53・2%が「きょうだい」を挙げ、次いで「団体・法人」が39・4%、「社会福祉協議会」が36・6%だった。

 また、後見人を務めている家族が健康不安などで後見することができなくなった際、誰に引き継ぎたいかを複数回答で尋ねると、117人のうち46・2%が「きょうだい」、32・5%が「団体・法人」と答えた。

 集計を担当した埼玉県手をつなぐ育成会の高野淑恵理事長は「法人後見の良さへの理解が広がっている。障害の特性を理解した上で、本人の意思を尊重し、暮らしを長期にわたって支えられる法人後見の担い手が増えてほしい」と期待する。

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