福井尚志「ひざの痛み 自力で解消」
医療・健康・介護のコラム
普通に歩いていても生じうる、膝の「骨の中の傷」とは?
ひざコラムも今回で3回目になりました。第1回のコラムでは、年齢とともに膝の痛みが生じる人が多いこと、第2回のコラムでは膝の構造と年齢による変化について書きました。特に第2回のコラムでは、「軟骨は傷ついても痛くない」などと書いたので、「これ、本当?」と思われた方もおられるかもしれません。それでは、なぜ中高齢の方で膝が痛むのか、今回はその理由について説明しようと思います。
膝が痛む原因は複雑 人によっても違う
実は、膝が痛む原因は意外と複雑で、そのすべてがちゃんとわかっているわけではありません。それでも、この20年ほどの間に研究が進んで、膝の痛みが生じる理由がある程度わかってきました。今では膝が痛む原因は複数あって、人によってその原因が違うことも明らかになっています。
膝痛の原因として今のところはっきりわかっているのは、骨の中に傷が入って生じる痛みと、関節全体を覆っている滑膜という膜に炎症が起こるために生じる痛みです。これ以外に、膝の内側や後ろ側のスジに炎症が起きたための痛み、半月が傷ついたことで生じる痛みもあります。今回は、このうち骨の中の傷による痛みについて説明したいと思います。
骨の内部はすき間だらけで軟らかい
「骨の中の傷」と書きましたが、これは一体どういうことでしょうか。これを説明するために、まず骨の構造を簡単に説明します。骨はご存知のように硬い組織ですが、じつは本当に硬いのは外側だけで、内部はすき間だらけの軟らかい骨でできています。このすき間だらけの骨のことを「海綿骨」と言います。フライドチキンの骨を思い浮かべてもらうとわかっていただけるかもしれません。
ひざで体重を主に受け止める太ももの骨( 大腿 骨)やすねの骨( 脛 骨)も、外側の硬い骨の中に海綿骨の部分があります。先に骨の中の傷と書いたのは、この海綿骨の部分に細かなヒビが入った状態のことを言います。細かなヒビと言っても、これは骨折の一種ですから、これができると膝に痛みを感じるようになることはご理解いただけるのではないかと思います。
膝でも起こる「いつの間にか骨折」
骨折の一種ですから、この骨の中の傷は何かの拍子に急に生じます。転んだり、バランスを崩してひざに強い力がかかったりした場合に生じることが多いのですが、不思議なことに普通に歩いているだけでも傷ができることがあり、またもっと不思議なことに、ケガなどをした覚えがないのに、いつの間にか骨の中に傷ができて痛みの原因となっていることもあります。
きっかけがないのに、骨の中に傷ができるなんて不思議に思われるかもしれません。でも似たようなことは、背骨ではよく起こることがわかっていて、「いつの間にか骨折」などと言われています。同じことが膝でも起こる場合があるわけです。
この骨の中の傷は普通のレントゲンでは診断が難しいのですが、MRIという検査で簡単に見つけることができます。
1 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。