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次々と運ばれていくシートに覆われた人たち…DMAT隊員ら「何もできず解散、非常に無念」

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 大阪・北新地の心療内科での放火事件当日、現場に駆けつけた二つの「災害派遣医療チーム(DMAT)」の隊員がそれぞれ読売新聞の取材に応じた。ともに救命の準備を整えて発生の1時間半後に到着したが、被害者の多くが一酸化炭素(CO)中毒で蘇生が難しく、治療の余地はなかったという。医師らは「無念だった」と振り返った。(東礼奈、中田智香子)

無念

 17日午前10時55分頃、大阪市内でビル火災発生との一報が大阪府済生会千里病院の千里救命救急センター(吹田市)のDMAT隊員に入り、医師2人、看護師2人ら計6人がドクターカーで現場に派遣された。

次々と運ばれていくシートに覆われた人たち…DMAT隊員ら「何もできず解散、非常に無念」

発生当日の状況を語るDMAT隊員の医師(中央)ら(大阪府吹田市の大阪府済生会千里病院で)

 出動直前の情報では、搬送の優先順位を決めるトリアージで、色分けされたタグ(札)は、赤(重症)が4人、黄(中等症)が4人、緑(軽症)が10人だった。だが、現場に向かう途中、先着した別の隊からCO中毒などで「黒(死亡または救命困難)に近い赤」が24人との情報がもたらされた。

 午前11時49分、現場に到着。何台もの緊急車両のサイレンが鳴って騒然としていたが、できることはなかった。ビル近くに設置されたテントの中からシートに覆われた人たちがストレッチャーで次々と運ばれていくのを見送るのみだった。

 「悔しくて、活動すらできない現実を受け入れられなかった」。初出動だった看護師の男性(29)は唇をかむ。現場にいたのは20分余りだった。

 リーダーを務めた医師(42)も「何もできずに解散となるような現場はあまりなかった。非常に無念だった」と振り返った。

準備むなしく

 大阪大病院(大阪府吹田市)の高度救命救急センターには午前10時54分、派遣要請が届き、2隊計7人が現場に向かった。

 入沢太郎医師(51)は、やけど患者が多数に上ることを想定し、気管挿管や点滴の準備を整えた。しかし、「27人が心肺停止」との情報が入った。

 午前11時50分頃、ビル周辺に着くと、火災特有の焦げた臭いが鼻をついた。煙で体を真っ黒にした消防隊員が行き交っていた。「救急隊らが心肺蘇生を試みたが、心拍は再開しなかった」と聞かされ、午後0時3分に出動要請は解除された。

 大阪府警によると、亡くなった25人のうち24人は死因がCO中毒で、残る1人もCO中毒で心肺停止状態になり、その後死亡した。入沢医師は「ガソリンをまかれると怖い。CO中毒で手の施しようがなかった」と語った。

  ◆DMAT =Disaster Medical Assistance Teamの頭文字で、「ディーマット」と呼ばれる。専門の訓練や研修を積んだ医師・看護師らが5人前後のチームを組み、多数のけが人が発生した災害や事故の現場で救急治療などを行う。大阪府内では19施設の医療機関に配置されており今回の放火事件ではうち7施設から出動した。

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