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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

首から腕の痛みにマッサージは要注意 外力で取り返しがつかなくなることも

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 Iさん(51歳、女性)は、「2か月ほど前から左首から肩、腕がすべて痛くなって、左手の指もしびれているんです。コンピュータのキーボードを打つのがつらくって」として、私の外来を受診された。このような首から肩、腕に生じる痛みは「 (けい)(けん) 上肢痛」「頸肩腕症候群」と呼ばれており、原因は頸椎(首の骨)を構成している要素の異常によるものが最も多いが、その他にも、交通事故や寝違いによる急性のものから、がんによる激痛まで多岐にわたる。

鑑別が重要 心臓疾患が潜むことも

首から腕の痛みにマッサージは要注意 外力で取り返しがつかなくなることも

 頸椎の構成要素の異常には、加齢変化による「頸部変形性脊椎症」「頸椎椎間板ヘルニア」「後縦 靭帯(じんたい) 骨化症」などがある。これらを症状によって大別すると、神経根症(ラディキュロパチー)と脊髄症(ミエロパチー)の二つになる。神経根症は、脊髄から出て腕に向かう神経が圧迫を受けて発症する。一方で、脊髄症は椎間板(背骨の骨の間にあり、クッションの役目を担っている)の後方への突出や (こつ)(きょく) (軟骨が肥大、増殖し、骨のように変化したもの)、後縦靭帯の骨化などによる物理的な圧迫によって脊髄自体が障害を受けていることによる。

 その他、頸椎以外の異常によって同様の痛みを生じるものとしては、「五十肩」に代表される肩関節の障害「胸郭出口症侯群」などもある。また、心臓疾患の関連痛として、首の後ろから肩に痛みを来すこともあるので、これらと鑑別しておくことが重要である。

 診断にあたっては、神経学的検査とともに、レントゲンやCT(コンピュ-タ断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)などの画像診断を行って、異常部位とその程度を調べる。

 治療法は原因によって異なるが、種々の薬物治療(最近ではリリカやタリージェなどのガバペンチノイドの処方が中心となっている)、理学療法、場合によっては手術(脊柱管開大術、前方固定術、椎間板摘出術)が行われている。

 私の外来では、星状神経節ブロック、頸部硬膜外ブロック、 (わん)神経(しんけい)(そう) ブロック、神経根ブロック(レントゲン透視や超音波を用いる)などを行い、良い治療効果を上げている。これらの神経ブロックには診断的意義もあり、神経根症と脊髄症との鑑別に有用である。なお、頸部硬膜外ブロックには、外来で局所麻酔薬と少量の副腎皮質ステロイド薬を注入する一回法と、入院してもらい、カテーテルで持続的に局所麻酔薬の注入を行う持続法がある。椎間板ヘルニアでは、脱出した髄核(椎間板の芯のようなもの)によって圧迫を受けている部位にむくみが生じて症状をさらに強くしていることがあるが、硬膜外ブロックはこのむくみを消退させる。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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