メディカルトリビューン
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コロナワクチン3回目接種で死亡率90%低下 イスラエル・トジナメラン接種例84万人の検討結果
イスラエル・Clalit Health Services/Sapir CollegeのRonen Arbel氏らは、同国でファイザー製の新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン・トジナメランの2回接種を完了した84万人超を対象に、3回目の追加接種(ブースター接種)の効果を検証。その結果、2回目接種後に5カ月以上が経過してから追加接種を受けた者では、受けなかった者に比べて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による死亡率が90%低かったとN Engl J Med( 2021年12月8日オンライン版 )に発表した。
死亡は1日10万人当たり、追加接種群0.16人vs.非追加接種群2.98人
イスラエルでは、SARS-CoV-2デルタ株の出現とトジナメラン接種後の経時的な有効性の減弱によるCOVID-19流行の再燃を受け、今年(2021年)7月30日に同国保健省がトジナメランの追加接種を承認した。
今回の解析対象は、2021年8月6日の研究開始時に50歳以上で、5カ月以上前にトジナメランの2回目接種を完了した84万3,208人(平均年齢68.5歳、65歳以上60%、女性53%)。最も保有率が高かったCOVID-19重症化の危険因子(併存疾患)は高血圧(46%)、次いで肥満(33%)、糖尿病(29%)の順だった。喫煙歴のある人が41%含まれていた。
主要評価項目はCOVID-19による死亡、副次評価項目はSARS-CoV-2感染とし、8月6日~9月29日(54日間)の研究期間中にトジナメランの3回目接種を受けた追加接種群(90%、75万8,118人)と受けなかった非追加接種群(8万5,090人)で比較した。
研究期間中のCOVID-19による死亡者数は追加接種群で65人(10万人当たり0.16人/日)、非追加接種群で137人(同2.98人/日)だった。患者背景、社会的因子、併存疾患を調整後の解析で、追加接種群では非追加接種群に比べてCOVID-19による死亡率が90%低かった〔調整後ハザード(HR)比0.10、95%CI 0.07~0.14、P<0.001〕。
年齢および性で層別化したサブグループ解析においても、追加接種群では非追加接種群に比べてCOVID-19による死亡率が有意に低く、調整後HRは65歳以上で0.09(95%CI 0.07~0.13)、65歳未満で0.13(同0.04~0.40)、女性で0.06(同0.03~0.11)、男性で0.12(同0.08~0.18)だった(全てP<0.001)。
SARS-CoV-2感染は83%減少、今後は安全性の検討も
また、副次評価項目とした研究期間中のSARS-CoV-2感染者数も、非追加接種群の1万1,108人に対し追加接種群では2,888人と有意に少なかった(調整後HR 0.17、95%CI 0.16~0.18、P<0.001)。
以上を踏まえ、Arbel氏らは「50歳以上でトジナメランの2回目接種後5カ月以上が経過してから追加接種を受けた者では、受けなかった者に比べて短期(54日間)のCOVID-19による死亡率が90%低かった」と結論。ただし、今回の研究は追跡期間が54日間と短く、重篤な有害事象については検討されていない。同氏は「追跡期間は短かったものの、この期間にイスラエルではSARS-CoV-2感染が広がっていたため、トジナメランの3回目接種と低い死亡率との有意な関連を示すには十分な環境だった」としながらも、「今後は、より長期の追跡で追加接種の有効性と安全性を検証する必要がある」と付言している。(太田敦子)
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