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自分の財産、死後は社会に役立てて…「遺贈寄付」の手続きと注意点

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 亡くなった後に財産をNPO法人などに寄付する「遺贈寄付」への関心が高まっている。一人で暮らす「おひとりさま」の増加や、社会貢献活動への関心の高まりが背景にあるとみられる。手続きの流れや注意点を専門家に聞いた。(沼尻知子)

[アドバイザー]樽本哲さん

私の財産 死後に役立てて…「遺贈寄付」で社会貢献

たるもと・さとし 2003年に弁護士登録。18年に樽本法律事務所を設立。東日本大震災をきっかけに非営利組織(NPO)の支援に取り組み「NPOのための弁護士ネットワーク」を13年に創設。21年から、一般社団法人「全国レガシーギフト協会」共同代表。

■NPOなど団体に

 山口市に住む女性(54)は、自分の遺産の一部を東京都内の認定NPO法人に寄付することにした。

 父と妹をがんで亡くしたことをきっかけに、女性は遺贈寄付に関心を持った。インターネットで、患者や家族にがんの正確な知識を伝えるための活動をしているNPOの存在を知ったという。「父と妹から引き継いだ財産を、がんで闘病中の人に役立ててほしい」と、遺言書にNPOへの寄付を書き記した。

 遺贈寄付は、この女性のように遺言書を作成するなどの方法で、財産の一部または全部を、社会貢献活動を行う団体に寄付することだ。NPO法人のほか、公益法人や大学などが寄付の対象となる。

■少額でも可能

 遺贈寄付に詳しい樽本哲弁護士は、「寄付はお金持ちの人がするものというイメージがあるかもしれないが、少額からでも可能な社会貢献だ」と話す。少子化や生涯未婚率の上昇で財産を託す親族がいない人が増えており、関心が高まっている。遺贈寄付を決めた後も、財産を手元に残しておけるので、寄付によって老後の資金が不足する事態がない点は安心だ。

私の財産 死後に役立てて…「遺贈寄付」で社会貢献

 遺贈寄付の方法には、寄付する財産を個別に指定する「特定遺贈」と、財産の全て、または一定割合を贈る「包括遺贈」がある。包括遺贈の場合、債務も含めて寄付先の団体に受け継がれる。債務が残されている事態を避けるため、包括遺贈は受け付けていない団体も多いので、事前に確認が必要だ。

 寄付先を選ぶ際「少額の寄付をして団体への理解を深めてから、遺贈寄付を検討してもいい」と樽本弁護士は話す。寄付をきっかけに団体の活動報告が届くことが多く、活動内容や寄付の使い道を理解することができる。団体主催のイベントに参加するのもよい。

 寄付先が決まったら、資産の状況を把握する作業に入りたい。相続人がいる場合は、相続人に何を残し、何を寄付するかを決めることが必要だ。

 現金化に時間や手間がかかる不動産や有価証券などの寄付を受け付けない団体もある。受け入れが難しい場合は、死後に不動産などを換金する方法も検討したい。また、まとまった額を寄付する場合は、家族に対し直接考えを説明するか、遺言書の中に寄付の動機を記載するといい。後々事情を知らない家族が「だまされたのでは」などと、困惑する事態は避けたい。

国庫に入った財産1.8倍に

 子どもなどの相続人がいない場合、没後の個人財産は国に帰属することになる。最高裁判所によると、こうして国庫に入った収入は、2020年度は約600億円と、13年度(約336億円)と比べて約1・8倍に増えている。

 遺贈寄付についての問い合わせや相談は、寄付を検討している団体に連絡する方法があるほか、普及活動にも注力する「全国レガシーギフト協会」(東京)などに尋ねることもできる。

 山口市の女性が相談したクラウドファンディング事業会社「レディーフォー」(東京)は今年4月、遺贈寄付に関する無料サポートを始めた。寄付先の団体紹介や遺言書作成のアドバイスなどをしている。情報を幅広く集め、納得感のある寄付先を選びたい。

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