産業医・夏目誠の「ストレスとの付き合い方」
医療・健康・介護のコラム
上司と円滑に関係が作れる人とストレスになる人…何が違うのか?
俺はおやじとよく遊んだよ!
田上さん: おやじとの関係で言えば、仲が良い方だったと思うよ。よく遊んでもらった記憶がある。学生のころから居酒屋にも付き合ったよ。そこでおやじの仲間を紹介され、彼らの会話に時々参加した。そういう経験から、おやじ世代の人たちが何を思い、大事にしているかが多少わかるようになったかもしれないね。
遠藤さん: そうか、君は父親と仲が良かったんだ。それが上司や先輩との接し方にもいい影響が出ているのかなぁ。
田上さん: 自分では特に意識していなかったけど、遠藤の話を聞いていると、そういうことなのかもしれないと思うよ。
遠藤さん: そうか。過去は変わらないし、どうすればいいのか専門家にも相談してみるよ。
無意識に父親と上司を「置換」、別人と意識して行動
このような経緯があり、彼は会社で実施したストレスチェックの「高ストレス者面談」に訪れました。
彼から「上司との関係が難しいのは、父親とうまくいっていなかったことと関係がありますか」と問われました。そこで私は精神分析の創始者であるフロイドの「置き換え」という考え方について説明しました。
「本人は意識していなくても、無意識の世界で『苦手な父』が『上司』に置き換わり、『置換』が生じる。そのために上司が苦手になることがある」。 その上で、「でも、実際には上司と父親は別人ですから、今までと違った態度を意識して上司と接してはどうでしょうか」と助言しました。
精神分析というのは、ひとつの説明で、それが理解できたからと言って問題が改善するというわけにはいきません。しかし、事例のように上司や年長者とうまくいかない人は、無意識のうちに上司と苦手な父親とを混同していないかどうか検討すると対処のヒントにつながることがあります。
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