山中龍宏「子どもを守る」
医療・健康・介護のコラム
赤ちゃんで目立つ「大人が熱い飲み物をこぼす」…低い温度でも深いやけどに
やけどで搬送の3割が0~4歳児
1995年の兵庫県の3歳児健診のデータで、生まれてから3歳児健診までの間に医療機関にかかったり、電話などで相談したりした事故の経験人数を調べてみると、やけどは子ども1000人当たり125.7人となっていました。家庭で処置をした、あるいは処置の必要もなかったやけどをカウントすれば、「3人に1人は何らかのやけどをする」というのは現在でも正しいと思います。
東京消防庁から発表されている「救急搬送データからみる日常生活事故の実態」のデータから「やけど」について見てみましょう。救急搬送された例ですので、重症度が高いやけどと考えていいと思います。
これによると、2019年の1年間に1400人弱の人がやけどのために搬送されています。最近5年間の搬送数に大きな変化はありません。発生場所の76%は住宅等居住場所でした。5歳刻みの年齢層でやけどの搬送人員をみると、0~4歳(397人)、5~9歳(71人)、10~14歳(43人)、15~19歳(45人)、以降はどの年齢層でも100人以下でした。0~4歳が全体の約3割を占めており、この年齢層にやけどが多発していることがわかります。17年から19年の3年間のデータ(表1)をみると、毎年、ほぼ同じ数値が並んでいます。また、やけどを起こした要因のデータを見ても、要因の種類や数値に変化はみられません。これらのデータから、毎年、同じ年齢層の子どもに、同じ要因によるやけどが発生していることがわかります。
表1.やけどをした小児の救急搬送人員(人)
2017年 | 2018年 | 2019年 | |
---|---|---|---|
0歳 | 131 | 103 | 112 |
1歳 | 178 | 181 | 176 |
2歳 | 59 | 54 | 52 |
3~5歳 | 84 | 89 | 74 |
6~12歳 | 89 | 77 | 89 |
東京消防庁「救急搬送データからみる日常生活事故の実態」
表2.やけどの発生が多かった要因のうち、第1位のものと、その救急搬送人員(人)
東京消防庁「救急搬送データからみる日常生活事故の実態」
表2から、やけどを起こした要因に、ポット・魔法瓶、熱湯、お茶・コーヒー、みそ汁・スープなどがあることがわかります。しかし、この情報だけでは、残念ながら予防を考えることができません。熱湯がどのような容器、あるいは製品に入れられ、どこに置かれ、乳幼児がどのようにアクセスし、どのような動きをして受傷したのか、それらの情報がないと予防を考えることができません。
今回は、乳幼児にやけどが多発していること、やけどの発生頻度や要因に変化が見られないこと、すなわち、これからも乳幼児がやけどする可能性は非常に高いということをお話ししました。次回から、これらのやけどを予防するための具体的なお話をしたいと思います。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)
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