がんのサポーティブケア
医療・健康・介護のコラム
骨転移でも車いすに移れる手段を考案 作業療法士としてがん患者を支える
1日20分週5回 末期患者から人生についての話を聴く
――赴任して間もない頃は、何をやるかも手探りだったというわけですね。患者さんの思い出などありますか。
赴任して2か月目に、乳腺外科から末期の乳がんの患者さんを紹介されました。40歳くらいの方で、趣味が編み物で、一緒に作業療法として行ってほしいという依頼でした。ところが、ご本人への初対面のあいさつで、あっさり断られてしまったのです。
――それで、どうしたのですか。
何をしてほしいのかをご本人に尋ねたところ、「先生とお話がしたい」との答えが返ってきました。理由を聞くと、主治医は毎朝、回診に来てくれるけど話す時間はほとんどないし、看護師さんもナースコールをするとすぐ来てくれるけど、またすぐ別のところへ呼ばれてしまうので、とにかく話がしたいというのです。
そこで、1日20分、週に5回、ベッドサイドを訪ねて話を聴くことになりました。お亡くなりになるまで、結局33回続きました。
――ひたすら患者さんの話に耳を傾けたというわけですか。
話題は、もっぱらその方が歩んできた人生に関することでした。後から考えると、これは「回想法」といって、スピリチュアルケアの基本だったわけです。
その経験をきっかけとして、「がん患者への作業療法の適応は何か?」と考えるのではなく、まず、患者さんに「何をしたいのか」を尋ねて、「その要望に自分の知識と技術で応えられるか?」と考えながら行動してきました。
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