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オミクロン株、再感染リスクに懸念 南アフリカ・サーベイランス解析

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 世界的な感染拡大が懸念されている新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新たな変異株オミクロン株は、既知のベータ株やデルタ株とは対照的に、過去のSARS-CoV-2感染により獲得した免疫を逃避して再感染するリスクが高いことが、南アフリカのサーベイランスデータの解析から示唆された。ゲノム解析は行われていないが、オミクロン株の出現時期に一致して再感染者の増加が加速しているという。同国・Stellenbosch UniversityのJuliet R.C.Pulliam氏が、査読前論文公開サイトmedRxiv( 2021年12月2日オンライン版 )に発表した。

各種の変異株と再感染リスクを評価

オミクロン株、再感染リスクに懸念 南アフリカ・サーベイランス解析

※画像はイメージです

 SARS-CoV-2への既感染は、感染リスクを80%以上低下させると推定されている( Lancet 2021;397:1459-69 )。一方、オミクロン株はスパイク蛋白に26~32個の変異がみられ、その多くが受容体結合ドメインにあり、中和抗体からの回避に寄与することが予測されている( Cell 2021;184:4220-423 )。

 南アフリカでは、第1波(2020年6~8月)、第2波(ベータ株:2020年12~1月)、第3波(デルタ株:2021年5~9月)を経て、2021年11月下旬、ハウテン州でオミクロン株が検出され、感染者が急増している。Pulliam氏らは、南アフリカ国立感染症研究所(NICD)のデータを用いて、ベータ株、デルタ株およびオミクロン株の出現以降にSARS-CoV-2再感染リスクが変化したかどうかを後方視的に調査した。

SARS-CoV-2陽性者280万人のデータを解析

 対象は、2020年3月4日~2021年11月27日に検体を採取しPCR検査や抗原検査でSARS-CoV-2陽性が確認された279万6,982例で、90日以上の間隔があり続けて陽性を示した場合に再感染疑いとみなした。

 〈1〉再感染疑い発生率の経時的変化(方法1:2020年9月以降の再感染率と帰無モデルで想定した再感染率との比較)〈2〉時間経過に伴い変化する初感染と再感染リスクの経験的推定(方法2:各時点での初感染と再感染の経験的ハザード係数を算出し、それらの相対値を経時的に比較)―の2項目を評価した。

第3波終了後に再感染リスクが上昇

 2021年11月27日までに、再感染が疑われる3万5,670例が特定された。再感染疑いの患者数の7日間移動平均は2021年9月21日時点で、第2波で最大162.6、第3波で最大349.1。デルタ株による第3波終了後に再び増加に転じ、7日間移動平均は2021年11月27日時点で250.7に達している。

 第3波が終了した2021年9月までに観察された再感染疑いは一定数で推移し、再感染リスクは経時的に変化しないと想定した帰無モデルと一致していた(最初のSARS-CoV-2感染確認から90日後の2020年6~9月をフィッティング期間として使用、方法1)。

 ベータ株とデルタ株の出現で初感染リスクは上昇したが、予想に反して、再感染リスクは比較的一定だった(方法2)。初感染に対する再感染の平均ハザード比は各波でわずかに低下、第3波終了後は状況が変わり、2021年11月1~27日では上昇している(第1波0.15、第2波0.12、第3波0.09、11/1~27 0.25。一般化線形混合モデルによる推定では、ベータ株やデルタ株流行時の初感染に対する再感染の相対ハザード比は、第1波に比べて低下した[第1波との比較:第2波0.75(95%CI 0.59~0.97)、第3波0.71(同0.56~0.92)]。これに対し、オミクロン変異株の拡大は、初感染リスクの低下と再感染リスクの上昇に関連していた。2021年11月1~27日では、第1波と比較した初感染に対する再感染のハザード比は2.39(CI95 1.88~3.11)に上昇した。

免疫回避で公衆衛生施策への影響大

 以上の結果から、Pulliam氏らは「集団レベルのエビデンスは、オミクロン株が既感染による免疫回避能力に関連することを示唆している。南アフリカでの再感染リスクの継続的な上昇は、オミクロン株出現のタイミングに一致している。その選択優位性は、既感染者への感染能を増強することで、少なくとも部分的にはもたらされると考えられる。集団レベルでは、ベータ株やデルタ株の出現で再感染リスクは上昇しなかった。これらの選択優位性が、免疫回避ではなく主に伝播性の増強にあることが示唆される」と述べている。

 各国でオミクロンの中和に関する実験的検証が進められる中、同氏は「既感染からの免疫回避は、世界の公衆衛生施策に重大な影響を及ぼす。自然免疫とワクチン由来免疫の両方に対するオミクロンの免疫回避の程度とともに、他の変異株と比較した伝播性および疾患重症度への影響を定量化することが急務となっている」と強調している。(坂田真子)

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